アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
631
-
始まりは慧からでも先に夢中になったのは俺で、そしていつも求めていたのも俺。
どこが好きだとか、もうそんなのは考えられなくなった時には遅かった。全て遅すぎた。
自分が普通じゃないって気付かないほどのめり込んで戻れなくなった。
俺は自分よりも君を優先してしまう。君が幸せならそれでいいと思ってしまう。幸せにしたいのに幸せになってほしいと思う。
多分…俺は君が笑っていてくれればそれでいい。たとえそれが俺に向けてじゃなくても、楽しそうに過ごしている姿を見るだけで幸せなんだろう。
自分で言ってることがバラバラなのはわかっていて、情緒不安なのも知っていて。それでもたどり着く答えは決まっている。
君には笑っていてほしい。自分を信じてほしい。
1人じゃないって気付いてほしかった。俺だけじゃなく、周りにはたくさんいるって知ってほしかった。
だから手放す前に帰れる場所を作ったんだ。それなら安心して次に向かえる。
君には幸せになってほしい。
俺にとっての慧は目覚めて真っ先に探すもの。隣にいないと不安になる。家で、学校でその姿を見ると自然と目はお前を追いかけてしまう。その日あった出来事を、何を見てどう感じたのかを知りたい。
1日が慧で始まって慧で終わる。そしてまた新しい日が始まる。
冬にお前と俺は時間を共に過ごし始めた。
初めて2人で迎えた春。俺の誕生日には喧嘩をして、高校生相手に大人気なかったのを覚えている。全身でぶつかって来てくれるのが嬉しくてお前の未来が欲しいと願った。
夏は旅行に行って2人で花火を見た。あれは今まで生きてきた中で1番の景色だ。暗い夜空に色鮮やかな花が咲き、その色に彩られたお前は本当に綺麗だった。
花火にだって負けたくないと子供じみた嫉妬をした。
秋になって俺は少しずつ距離を取ろうとしてお前を不安にさせた。素直になれなくて自己嫌悪に陥っているのに気付いているのに、何もしてやれない自分が歯痒かった。
それと同時に必要とされてるのを実感して、自分の弱さと醜さを知った。
そしてまた冬が始まる。
本当はしてあげたい事がたくさんある。寒いなら暖めてあげたい。クリスマスは何が欲しいんだろうか。年越しは遠出して日の出を見に行きたかった。
2人で新しい1年を迎えたかった。
そういえば冬休みには旅行に行こうって約束していたっけ…ほら。また俺は嘘をついた。
したくないことをして、したいことが出来ない。
朝も昼も夜も、春も夏も秋も冬も。どんな時も何を考えても初めに浮かぶのは1人だけ。
本当に…君は俺の全てだった。
待ってろって言うならいつまでも待ってる。
何ヶ月でも何年でも…死ぬまで、死んでも待ち続ける。
邪魔なものは全て俺が取り除いて、安心して帰ってこれるようにするから…だから
『さよなら』
どうかそれを別れの挨拶にしないで。
「ただいま」と笑いながら戻ってきてほしい。
今までの2人を思い出にしないでほしい。
過去にしないでこれからも続けていきたい。
また笑って怒って、そしてリカちゃんと呼んでほしい。
俺を夢中にさせた責任をとって。
『俺を置いて行かないで』
それは君が俺に言ってくれた言葉。不安になって泣きそうな声で言った姿を思い出す。
それを俺は心の中じゃなく口に出してみた。
「置いて行かないで」
1人きりの部屋に小さな声はすぐ消える。誰にも聞こえない、誰も応えてくれない。
俺の願いは君には届かない。
それでも俺は君だけを思い、君だけを待つ。
そこに難しい理由なんて無い。
ただ、君を愛してるんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
631 / 1234