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リカちゃんが由良さんに向かって振り返る。
「由良、お前に何度も約束させたこと覚えてるか?」
その言葉に由良さんの顔がこわばった。リカちゃんがそれを見て首を傾げた。
「へぇ…その顔はまだ覚えてるんだな。で、いつまでここにいてんの?」
リカちゃんが一歩、由良さんに近付く。すると由良さんは今度はなぜか後ずさった。
「なんで逃げんの?俺に言いたい事があるから来たんだろ?」
「逃げてるわけちゃう……けど」
状況がまったくわからない俺と拓海を無視して2人の…というより、リカちゃんの空気が変わる。まるで俺たちの存在を忘れたのか目には由良さんしか映ってない。
その様子に、由良さんがリカちゃんの押してはいけないスイッチを押してしまったんだとわかった。
俺が押しちゃうのとは別のスイッチ。
リカちゃんの中で何かが切れたのか、どんどん由良さんに詰め寄っていく。
「慧、リカちゃん先生おかしくないか?」
不安そうな拓海の顔。その後ろに歩の姿が見えた。
もう何がなにかわからなくて…でも歩なら何かを知ってる気がして、俺は早く来てくれって気持ちを込めて名前を呼ぶ。
歩がやっと気付いた時にはリカちゃんと由良さんの距離はほとんど無くなっていた。
リカちゃんが蹴った小石が路面に跳ねる。
「言えよ。言いたい事があんなら」
「別に…」
「さっきまでの威勢はどうした。何怖がってんの?」
リカちゃんの手が由良さんに伸びる。それを振り払った由良さんが無言のままリカちゃんを睨みつけた。
振り払われた手を見つめたリカちゃんがまた笑う。
笑ってとんでもないことを口にする。
「そんなに抱かれたいならその辺のやつ捕まえろよ。それとも前みたいに強請ってみる?」
リカちゃんが言った言葉に俺は固まり、由良さんは悔しそうに唇を噛んだ。
今、リカちゃんはなんて言った?
「そうしたら俺もあの時と同じように答えてやるから」
きっと今のリカちゃんに俺は見えてない。怒りで我を忘れて、ただ由良さんを攻撃することしか考えてない。
俺が聞いてるとか、拓海もいるとか…そんなこと今のリカちゃんには関係ない。
「こんな身体でよければ好きにしたらいい」
「理佳、やめろ!」
「勝手に乗って勝手にイけよ」
「やめろ言ってるやろ!!」
大きな声で制止する由良さんを無視したリカちゃんが近寄っていたのをやめて立ち止まる。
「理佳!」
由良さんがリカちゃんの名前を呼んで頭を振った。聞きたくないと耳を押さえ縮こまる。
「但し、条件が2つある。1つ目は……」
「言うな!!!」
叫んだ由良さんの腕が上がる。それを見た俺の身体は勝手に動いてしまう。
気付けばリカちゃんを庇うように飛び出していた。
「慧!」
拓海の声か、それとも歩の声か。誰かに呼ばれたのが聞こえた時には既に衝撃が走っていて、それが由良さんに殴られた痛みだとわかった。
咄嗟過ぎて噛んでしまった口内に血の味が滲む。
「慧、大丈夫か?」
「あー…うん。ちょっと切れたけど大丈夫……え、」
駆け寄って来た拓海に答えた俺の目の前に何かが飛び込む。それは由良さんが倒れ込んだ姿。
俺を殴ったはずの由良さん。その倒れた身体に乗るのは黒に包まれた長い足。
綺麗で高そうだと思った着物を容赦なく踏みつけたリカちゃんが今度は蹴り上げる。鈍い音がして由良さんが咳込んだ。
「立て」
「…っく…、あ…きよし」
「聞こえなかったのか?立て」
立てない由良さんを引きずり上げたリカちゃんが掴むのは由良さんの髪。それは乱れてリカちゃんの指の隙間から流れ落ちる。
「っつぅ、痛い…やめ」
「だから教えてやったのに……俺を怒らせるなって」
痛みで顰められたままの由良さんの顔めがけてリカちゃんの手が伸びる。
歩が呼んでも拓海が大声で叫んでもリカちゃんの手は止まらない。完全に切れたリカちゃんが怖くて、でも見たくなくて俺は思わずリカちゃんの腰にしがみついた。
「リカちゃん!やだ!もうやだ!!!」
やっとリカちゃんの動きが止まる。
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