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力が抜けたリカちゃんから由良さんは離れていき、蹴られた腹を庇いながらも乱れた服を整えた。赤く目を充血させ俺とリカちゃんを睨みつける。
「リカちゃん何やってんだよ」
「慧……」
「何リカちゃんらしくねぇことやってんだって言ってんの」
俺を見たリカちゃんの目が冷え切ったものから普段に戻る。そして心配そうに歪み、切れた俺の唇を撫でた。
俺の身体を離したリカちゃんが向き合って顔を押さえて俯く。
「切れてる…ごめん」
「別に。男なんだからこれぐらい平気」
「……ごめん、本当にごめん」
ごめんと繰り返し殴られた俺の頬にリカちゃんが手を当てた。そのままずるずると肩に落ちてくる。
そこに額を預けたまま、もう一度小さな声で「ごめん」と言った。
全然わけわかんねぇ。
リカちゃんがなんでキレたのかも、由良さんがリカちゃんに手を上げた理由も想像すらつかない。
それでも、さっきリカちゃんが由良さんを殴ろうとしたのは俺が殴られたから…だと思う。俺が止めなきゃ今頃リカちゃんは由良さんを殴ってた。
止めることができて本当に良かった。
「おい、大丈夫か?」
歩に話しかけられてリカちゃんが俺から顔を上げる。向き直った先にいるのは黙ったままの由良さんだ。
由良さんを見た歩が嫌そうに顔を顰めた。
「由良、なんでお前がここにいんの?」
「なんや歩も来たんか。相変わらず理佳にベッタリで気持ち悪い」
「それはこっちのセリフなんだけど。お前こそストーカーみたいに追っかけて来てんじゃねぇよ」
リカちゃんと仲が悪くて、歩が敵意丸出しで、でもって知り合いの3人。その関係って何だ?
なんでリカちゃんは由良さんをこんなに嫌ってるんだろう。
歩がリカちゃんの隣に立つ。2人で俺と拓海を背に由良さんと向き合う。由良さんが先に見たのはやっぱりリカちゃんだった。
その次に歩を睨む。
「年上の、しかも良くしてやってた従兄弟に対して口が悪い。今時の子供はほんまに品が無くて心配やわ」
「うっせぇ。こっちはお前に良くしてもらった覚えなんかねぇんだよ」
「せやな…俺は出来の悪いやつ大っ嫌いやから。そのアホそうな髪、お前に似合ってるで」
チッと舌打ちした歩が俺を見た。
親指で由良さんを指し、教えてくれる。
「これ、俺らの従兄弟。獅子原由良」
「いとこ?」
「つっても見ての通り俺ら兄弟とコイツの仲は最悪だけどな」
いや…もうわけわっかんねぇよ。なんで従兄弟同士でこんなに荒い喧嘩して、従兄弟同士であんな………抱く、とか抱いてくれとかの話になんのか。
リカちゃんと由良さんの間に何があったのかマジでわかんない。
あまりにも意味がわからない上に、修羅場見せられて嫉妬するにも出来ない俺に由良さんが微笑みかける。
前まではいい人そうに見えた笑顔は今では胡散臭くて気持ち悪く感じた。
「改めまして慧君。俺は獅子原由良、この理佳と歩の従兄弟で………」
言葉を切って笑顔を引っ込め、告げる。
「理佳の昔の男。慧君ならこの意味わかるよな?」
やっぱりという思いと、まさかという気持ち。それが混ざって俺はリカちゃんを見上げた。
「………ごめん」
顔を背けて辛そうに謝ったリカちゃんの様子。それは認めたくないけれど肯定だった。
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