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薄暗い寝室にあるのは大きなベッド。余分な物を置かないリカちゃんらしい綺麗に整頓された部屋…なのに。
そこにはリカちゃんらしくない物がいた。
それに向かって行こうとした俺の足が止まる。
振り返って見ると少し焦ったようなリカちゃんの顔。俺を止めるために掴んだ肩が少し痛い。
「見るな」
「って言われてももう見ちゃったんだけど…」
「忘れてくれ」
いやいや…無理だろ。だって見ちゃったんだもん。
ばっちり見えちゃったんだから忘れられるわけない。
「えーっと、あれ…何?」
俺の記憶が確かなら前までは無かった。ベッドの上に物を置くのが嫌いなはずのリカちゃん。
あんなものは無かったはずなんだ。
「あれって何のこと?」
ごまかそうとしてリカちゃんが俺と部屋の間に立つ。背の高いリカちゃん越しにそいつと目が合った。
「あれって、どう見てもあれだろ」
「知らない。俺には何も見えない」
「それは無理があると思うんだけど」
2人して黙ること数秒。扉にもたれたリカちゃんは前髪をぐしゃっと握り、唸った。
やっと諦めたのか瞼を閉じてため息をつく。
「……1人じゃ眠れなくて」
リカちゃんの身体を押しのけた俺はベッドまで歩いていく。見つめあっていたソイツに触れることが出来た。
白い身体に黒い瞳、大きな耳が2つあって全体的にふわふわしてる。
それは大きなうさぎのぬいぐるみだった。
リカちゃん愛用の香水の匂いがするうさぎは、大事にされてるんだろう。近くで見ても汚れとかほつれは無い。
部屋の外にいる時には気づかなかったけど、こいつの他にも何個か転がるうさぎのぬいぐるみ。白いのもいればピンクもいて黒も灰色もいる。
枕元に、布団の隙間に。脱いであった部屋着の上に。
部屋の色々なところにうさぎはいた。
ギシッと音を立てて俺から少し離れたところに座ったリカちゃんが灰色のうさぎを手に取る。ゆっくり頭を撫でながら俺を横目で見た。
目が合って瞬時にそらされる。
「情けないのも気休めなのもわかってる。けどもう限界だったから」
「限界って?」
「1人じゃ寝付けない。やっと眠れたと思っても、うなされて起きる。嫌な夢ばっかりみるんだ」
「リカちゃん…やっぱり寝てなかったんだ」
前に歩が言ってたのを思い出した俺にリカちゃんは小さく頷く。
「隈を隠すのが得意になった。そんな特技あってどうするんだって話だよな」
力なく笑って手に持っていたうさぎを額に当てた。そいつの鼻とリカちゃんの鼻がぶつかる。
「こいつらがいるとマシになる気がして、でもそれは数日で元に戻る。気づけばどんどん増えていった」
いい年した大人の男がうさぎのぬいぐるみ抱いて眠る…って気持ち悪いと思うんだけど。
「バカじゃねぇのって笑えよ」
リカちゃんがムスッとして開き直る。
気まずそうに…でも照れ隠しで睨まれて思うのは、やっぱり好きだなぁっていう感情。
リカちゃんに抱えられてるうさぎのぬいぐるみと今すぐ代わりたい。
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