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「兎丸?」
一服して部屋に戻ってみると、そこには机に突っ伏して眠る兎丸の姿があった。朝からずっと勉強してたんだから仕方ない。
突っ伏した下に広げられたノートには何度も消した後がある。今までのこいつなら考えられないことだ。
このまま寝かせるのは風邪をひくし、かといって起こすのも可哀想に思えた。
そっと身体を持ち上げて部屋まで送ってやろうと1歩進む。
「ん……」
身じろいだ兎丸を落とさないよう抱き直す。より密着したことにより俺の鼓動が早くなる。
久しぶりの温もりと匂いに眩暈がしそうだった。
「お疲れ様」
絶対に届いてないはずなのに兎丸の頬が緩んだ。また鼓動が早くなる。
「リ…ちゃん」
呼ばないでほしい。今は駄目だって言いたいのに俺は違う言葉を口にする。
「慧」
「リカちゃん」
今度はちゃんと俺を呼んでくれた。たったそれだけのことなのに…それだけなのに脆すぎる俺の理性は崩れ落ちる。
「今のはお前が悪いんだからな。俺は1回は我慢したんだから」
そんなこじつけたような言い訳で身体を反転させた俺は玄関ではなく寝室へ向かう。そこには夜な夜な抱いて眠るぬいぐるみ達。ウサギをベッドへと寝かし、それを抱えてリビングのソファに並べた。
感情なんて無いはずのそいつらが恨めしそうに俺を見る。
「ごめんな、今日は本物がいるから…今日だけは許してくれよ」
それは誰に対しての謝罪なのか今じゃもうわからない。ここで帰すべきなのにそれをしないのは自分に甘過ぎる。
頭ではわかっていても無理だった。
シャワーを浴びて戻った寝室には眠るウサギがいて俺はその隣に潜り込んだ。もう何日ぶりかもわからない一緒に眠る夜。何度も夢見た2人の夜。
伸ばした腕で抱き寄せれば慣れたウサギは身体をすり寄せてくる。すっぽり胸の中に入って安らかな寝息を立てる。
細い首筋に俺の痕はもう無くて、それは当然なのに無性に悔しくなった。
襟に隠れる辺りに唇を当てる。赤く色づいた肌に満足して今度は唇に目がいく。
「今日も頑張った慧君にご褒美」
軽く触れた唇から伝わる甘い痺れ。頭の奥まで溶かしてしまいそうなほど甘くて痛い感情。
「愛してる」
まるで初恋と失恋を一気にしたような、そんな気持ち。
嬉しくて幸せで、でもまだ届かなくて苦しくなる。
また暗闇に落ちそうな俺を引き止めるのはやっぱり1人しかいない。
「リ、カちゃん」
「───っ、起きたのか?」
「……ブロッコリーは、やだ」
寝言に安心して力が抜けた。
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