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テストは全部で11科目。中間テストの後に修学旅行があった俺たちは他の学校に比べて実施が遅い。よって範囲も少し多い。
「……死んだ」
テスト最終日。ラストの数学が終わりテスト用紙が回収されていく。後ろの拓海が言ったセリフに俺は振り返った。
「安心しろ。お前は生きてる」
いつもみたいに髪は立ってないけど死んではいない。そう言うと拓海は恨めしそうに顔を上げて俺を睨んだ。
「なんなの…あの範囲の広さ!でもって俺の苦手なとこばっかり!!!」
「あー…うん、それは確かに…ってお前に得意なとこあるのかよ」
「あるよ!!数字だけの計算なら得意だ!」
「それだったら誰も勉強しねぇだろ。やっぱりバカだな、拓海は」
俺が呆れると拓海は問題用紙を握りしめ唸った。
今回のテストはいつもに比べて難しかったと思う。応用は多いし引っ掛けも多かった。でも俺は落ち着いてる。
「なんで慧はそんなに余裕そうなんだよ」
「意外と解けた」
「なんで?!」
拓海が驚くのも無理はない。だって俺は数学が1番苦手だからだ。今までは毎回必ず赤点だったし、数学に関しては初めから諦めてることが多い。
それでも今回のテストは数学が1番自信があった。
だってリカちゃんに教えてもらったところが出てたんだもん。それも同じようなのが何問も。
アイツもしかして事前にテスト用紙盗み見してねぇよな?って思うぐらいにだ。
「おいバカ共。帰るぞ」
唸る拓海を無視して帰る準備をしていたら歩がやって来た。無造作ヘアとか言われてる寝ぐせ頭の金髪。今日もそれは健在…というより、いつもよりひどい。
「歩も余裕そうだし…騙された…」
「あ?」
「テストだよ!テスト!!」
机にしがみついて喚く拓海の上に容赦なく覆いかぶさる歩。最近やたらと歩はスキンシップが多い気がする。
重たいと騒ぐ拓海にニヤッと笑った歩は鞄の中から問題用紙を取り出す。それはさっき終わったばかりの数学だった。
「俺、今回いい線いってると思う。さっきの数学やたら勉強したところ出たし」
「歩も?俺もそう思った」
珍しく歩と同意見で思わず声をあげた俺を、ニヤニヤ顔の金髪が見る。
「当たり前だろ。俺だって兄貴に教わってんだから」
「あぁ…そっか、お前も教えてもらってたんだ…」
「お前だけだとか思ってんなよ、バカウサギ。兄貴はちゃんと俺の勉強も見てくれてんだよバーカ」
…出たブラコン。偉そうに言うのがお兄ちゃんであるリカちゃんの話ってどうなんだよ。なんでこれでブラコンの自覚が無いのか不思議だ。
それにしても、やけに的中したリカちゃんのヤマ勘。疑問に思った俺は歩に聞いてみた。
「なぁ…リカちゃんって、なんで出るところわかったんだろ?もしかして盗み見たのかな?」
「バカか。いくら頭ぶっ飛んでてもそれはねぇよ。今回テスト作ったやつの性格なら、ここ出すだろうって言ってたから全部あいつの勘だ」
それは勘と言えば勘なんだけど、ちょっと罪悪感がある。何も知らないヤツらよりも優遇されてる気がしないでもない。
少し複雑に思ってしまう俺の頭を歩が丸めた問題用紙で叩く。
「別にズルしてるわけじゃないから。塾行ってるやつらなんかもっと情報持ってるし」
「それはそうだけど……」
「勉強したのはお前の努力だし解けたのもその結果。たとえヤマ張られててもお前が頑張らなきゃ結果は出せない」
歩のくせに言ってる事がちゃんとしてる。金髪でどう見ても不良のくせに。
「お前兄貴に感謝しろよ。あいつが教えてくれなきゃ死んでたぞ。このバカな鳥みたいに」
「バカって言うな!!いい加減どけよ!お前無駄にデカくて重たいんだってば!!」
歩の下でもがきながら怒る拓海。体格差から敵うわけなくて諦めて項垂れた。
慰められたのが歩ってのが癪だけど…過ぎてしまったことを悩んでも仕方ない。俺はやれるだけの事はやった、自分のベストは尽くせた。
「…そうだな。これで平均点70いけるかも!」
「は?70ってお前が?」
「うん。約束したから」
ジッと俺を見た歩が拓海から身体を起こし、俺の肩に手を乗せた。
「慧、それは無理だと思う」
「なんでだよ」
どの教科も満遍なく出来た。苦手な数学に至っては自信がある。だから歩が無理だって言う意味がわからなくて俺は首を傾げた。
そんな俺に歩は教えてくれる。
「今回の英語、くっそ難しかったってみんな言ってる。多分ほとんど80点以上いないだろうって」
「え……嘘だ。俺解けたもん」
「俺だって解けた。でも帰って自己採点したら全然ダメだった」
あれさえなきゃもっと点数良かったのに…と悔しそうな歩の顔。その顔がまた俺に向く。
「ちなみにそのテストを作ったのは…」
もうわかってる。そんな難しくて意地悪なテスト作ったのが誰かなんて。あの悪魔以外にいるわけない。
「兄貴じゃなくてもう1人の英語担当だ」
「アイツ何してくれてんだよ!!」
てっきりリカちゃんだと思ってた俺は、それが別のヤツだってわかって思わず叫んでしまった。
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