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リカちゃんが何でもしてくれるから、どんなことでも叶えてくれるから俺は自分で決めない。まあいいかって力を抜いて全力で取り込むことはなかった。
そんな俺を見てリカちゃんは何とかしてやらないとって思う。
自分が守ってやらなきゃ、教えてあげなきゃ…自分が頼りにならなきゃって自分を追いつめる。
リカちゃんは完璧なんかじゃない。この世に完璧な人なんていない。
いつも余裕そうに笑ってるのは、そうじゃないとダメだからだ。悩んでることを誰にも言わずに1人で解決しなきゃいけないと思わせたのは俺だ。
離れてみて気付いたことはとても多くて、俺は何度も自分を嫌いになりかけた。でもその度に頭に浮かぶのはアイツの笑った顔だった。
初めからなんでも出来る人なんていないし俺はまだ何も始めてない。それなら諦めるのはまだ早い。
頑張れじゃなく、頑張ってるって認めてくれる人がいるのに前に進まないなんてバカだ。俺はそんなバカには絶対にならない。
「由良さんから見たら俺は子供でバカで、リカちゃんと釣り合ってないって思うだろうし…それは本当だから否定しない」
そう言った俺に由良さんは微笑んで頷いた。何も言い返してこず、満足そうに笑っているだけ。
その笑顔を俺は見つめたまま続ける。
「それでもリカちゃんは俺にいてほしいって、好きだって言ってくれる。アンタが何年も貰えなかった好きを俺は何回も貰ってんだよ」
俺は自分を好きだとは思えない。けれどリカちゃんが好きだって言ってくれる俺なら好きになりたい。
桃ちゃんが言ってた「答えなんてすぐに見つけなくていい」って言葉。あれは進路のことだけじゃない。これからも俺は悩んで迷って間違ったりもするけど…それでも変わらないことがある。
笑顔が凍りついた由良さんに今度は俺が微笑む。滅多に見せない笑顔の俺に由良さんは低い声で唸った。
俺の言った言葉の意味なんて興味がないのか、由良さんは下ろしていた窓を上げる。半分ぐらいの位置まできて、一旦止めた。
2人の間に透明の壁ができて内心少し安心したのを悟られないように、視線はそらさない。
けれどさすがリカちゃんの従兄弟だけあって由良さんも手強い。睨み合う俺たちの間に見えない火花が散る。
「相手を追いつめてるってわかってても解放したくない。慧くんて性格悪いな」
「何とでも言えばいいだろ。でもアンタに1つ教えてやるよ」
俺は屈んで由良さんと視線を合わせた。
綺麗な顔に高そうな着物に車。俺と違って大人でリカちゃんと一緒にいても違和感がない由良さん。
由良さんといればリカちゃんは責任とか感じないのかもしれない。余計なしがらみなんて無くて、毎日気を張ってなくていいのかもしれない。
それでもリカちゃんは由良さんを選ばない。
「アイツは俺の為に生きてんだよ。どうせアンタには一生意味のわかんねぇ言葉だろうけどな」
本格的に振り出した雨に俺と歩は屋根の下に避難した。車の中から俺たちを見る由良さんは悔しそうな、それでいて悲しそうな顔をして走り去っていった。
車が見えなくなってずっと黙っていた歩が口を開く。
「お前…なんか強くなったな」
「それリカちゃんにも言われた。っつーか、普段お前とかリカちゃん相手にしてるからあの人ぐらい平気になってきた」
「それは俺たちに染まってきたってことだな」
うんうん頷いて満足そうな歩はスマホを取り出して軽く操作した後、耳に当てた。少しして相手が出たのか端的に用件を言う。
その内容が…もうお前何考えてんだ?!って思う内容だった。
「俺。お前の愛しのウサギちゃん、雨に降られて震えてんぞ。このままじゃ風邪ひくか誰かに拾われるかだな。は?知るかバーカ」
電話を切ったついでに電源まで落として笑う。
「俺からのクリスマスプレゼントってことで」
即座に鳴った俺のスマホ。その液晶に映る名前は隣の金髪の兄貴だった。
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