アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
698
-
首を傾げたリカちゃんが俺に問いかけた。
「タクシー拾ってやるから1人で帰れる?」
「1人でって…リカちゃんは?」
「さすがの俺もフラれた相手と2人きりはきついって。明日からは普通にするから今日は許して」
リカちゃんが何を言ってるのか頭ではわかってて、でも心が受けとめられない。
向けられたその背中は俺がいつも追いかけてて、俺をいつも庇ってくれた背中。全然逞しくはないのに安心できる、俺の目標だった。
それに向かって手を伸ばそうとしたらリカちゃんが1歩進む。止めなきゃってわかってるのに言葉にできない。
手が届かない距離まで離れてしまったリカちゃんが立ち止まった。
「今日も楽しかった。一緒にいてくれてありがとう」
こちらを見ないで言うだけ言って俺の返事は聞かずにリカちゃんは大通りに向かって行ってしまう。
「今日も」って言ったリカちゃんの背中がどんどん遠ざかる。
俺はいつも自分のことばっかりに必死でリカちゃんが何に悩んでるのか気づかなかった。気づこうとしなくて、でもそのくせ教えてくれないって不満だった。
リカちゃんは俺を好きだって思う度に苦しくて、でも止められないって言う。俺はそれを止めてほしくない……でもリカちゃんが苦しいのも嫌だ。
全部、全部やだ。
追いかけるか、追いかけないか……追いかけたいのか、追いかけたくないのか。自分に問いかけた答えはすぐに出た。
言いたいことが言えなくて、自分を抑えなきゃいけないのが大人なら俺は一生なれないかもしれない。そんな大人になんかなる必要なんてない。
だってリカちゃんは俺がワガママなのも、話を聞かないのも頑固なのも知ってる。素直じゃないのも、すぐ拗ねるのもわかってて「今日も楽しかった」って言ってくれたから期待に応えたい。
本当はまだ何も解決策なんて見つかってないし、答えなんて思いついてないけど…それでも俺はリカちゃんを追いかけた。
答えを見つける為の今なんだから悩んだって迷ったって仕方ない。それを教えてくれた男を探すけれど人通りが多く、なかなかその姿が見つからない。
綺麗なイルミネーションと幸せそうな人並みの中で俺は1人になった。
それでも止まらない。俺は面倒臭いことが嫌いで、考えるのも嫌いで、ブロッコリーも虫も勉強も嫌いだ。嫌いなことはたくさんあるけど…。
言いたいことを我慢して気にしないふりして黙ってるのはもっと嫌い…嫌いどころじゃなく大嫌いなんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
698 / 1234