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「…ん、慧君起きて………起きろウサギ!」
身体を揺すられて目を開ける。ゆっくりと広がっていく視界は薄暗く、ここがどこだかわからない。
「…つ、いた?」
結局ぶっ通しで寝てしまった俺はリカちゃんに起こされて周りを見回した。そこには車が数台あって、ここが駐車場なんだって知る。
「ここどこ?ってか何時?」
「朝の4時。すげぇな8時間切った」
遠くから細く差し込む色はまだ夜中の色。暗い中で俺の手を取ったリカちゃんは車から降りるよう催促する。
「歩けないなら抱いて行ってやろうか?」
「絶対にいらない」
肩を竦めたリカちゃんは車のロックをかけた後、何も言わずに歩いて行く。駐車場の奥の方にあった小さな扉を開けて俺を呼んだ。
駐車場から直接建物に入ればそこは知ってるけど知らない場所だった。
この光景は何度か見たこと…ある。例えばドラマとかソッチ系のDVDでだ。
無人のフロントを越えたリカちゃんが立つのは液晶パネルの前。黒い画面に紛れて数個だけ明かりのついた画面を指さす。
「ジャグジーのある部屋と最上階とSMルームのどれがいい?」
「………は?」
「つっても備え付けのやつなんか触りたくもないしなー。やっぱり最上階かな」
聞いたくせに自分で勝手に選んでボタンを押したリカちゃん。すると、近くにあったエレベータのランプがすぐに点滅する。俺の手を掴んだリカちゃんは躊躇うことなくそれに乗り込んだ。
10階まではすぐに着いて、開いた扉の目の前で矢印がまた点滅していた。
明かりに導かれるように角を曲がり、廊下をすすめば1番奥の部屋へと到達する。ドアノブを回したリカちゃんがやっと俺を振り返った。
「さ、どうぞ」
「どうぞって言われても…」
「まあ気にせず入れよ」
はっきり言って、こんな状況は誰がどう考えても気にするに決まってる。
起こされたと思ったら知らない場所で寝ぼけ気味のまま連れて来られた部屋が…こんな…こんな所だなんて。
「なあ、ムダだと思うけど聞く………なんで?」
「無駄だとわかってんなら聞かなくていいだろ」
即答され、背中を押されて転がりこんだ部屋の中。短い廊下の先にある部屋にはカウンターテーブルが見えて、その奥には大きなベッド。
後ろでゴソゴソ動いていたリカちゃんが、入口で立ち止まっていた俺の身体を持ち上げる。
「ちょっと!!降ろせ!降ろせってば!」
いつの間にか脱がされていた靴が玄関に転がり、俺は小脇に抱えられて部屋の中に入った。 スプリングのきいたベッドに投げられた身体が跳ねる。
自分には縁のない場所だと思っていた所になぜいるのか…頭は既に考えるのを放棄していた。
「ここがどこだと思う?」
「どこだとも思いたくない。 夢だと思いたい」
「残念ながら夢じゃないんだよなぁ」
カウンターテーブルに脱いだジャケットと外した腕時計を置いたリカちゃんが満面の笑みを浮かべた。
「慧君、初めてラブホテルに来た感想は?」
「最っっ悪!」
答えた俺にそういうコトをする部屋の中で1番卑猥な存在の男が首を傾げる。
「もしかして……照れてる?やっばぁ…慧君可愛い」
「誰がだ!!!」
備え付けの椅子に腰を降ろしたリカちゃんがタバコに火を点ける。
「なんでラブホ?!何時間もかけて来たかったのがラブホなのか?!」
「なわけあるか」
「じゃあなんで?!」
意味がわからず、食ってかかるように問いかければリカちゃんはのんびりと答えた。
「だってこの時間じゃどこも空いてないし。かと言って車の中じゃ休まらないし慣れない場所で外にいるのは嫌だったから」
慣れない場所ってどこ?!ここはどこなんだ?!部屋の中にそのヒントは無くて、唯一知ってるはずのリカちゃんを見る。
「ここ……どこ?」
「だからラブホテ「じゃなくて場所だよ!!」」
リカちゃんが俺に放り投げたのはカウンターに置いてあったライター。そこにはホテルの名前と地図が書かれていた。
「……え、嘘だろ?」
いくらリカちゃんがぶっ飛んでても何の相談もなしに、とは考えられない。
それなのに綺麗に印刷されたその文字がここがどこだか教えてくれる。
「宣言通り慧君を連れ去ってみた」
語尾にハートマークを付けた先生が俺を連れて来たのは、家から遙か離れた関西のとある県だった。
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