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シャワーを浴びて戻ると、リカちゃんは椅子に座ってタバコを吸っていた。
脚の長い椅子に浅く腰かけ、スマホを弄っていたリカちゃんが俺を見る。ふっとその顔が緩んで、甘すぎる雰囲気に俺はもう一度バスルームへ戻りたくなった。
「おいで」
タバコを消したリカちゃんが俺を呼ぶ。その手に香水の瓶が握られてるのを見て俺は近づいた。
自分の前に俺を立たせたリカちゃんがシュッと一吹きティッシュに吹きかける。
「なんで?」
なんでそこにかけたんだって聞く俺にリカちゃんが答える。
「直接かけると強いから」
香水を沁み込ませたティッシュを俺の身体に当て馴染ませる。ゴミ箱にティッシュを投げ捨てたリカちゃんは最後に俺の頬にキスを落とす。
椅子から立ち上がったリカちゃんが待っててと言って数分。
「じゃあ行くか……と、その前に」
部屋を出ようとしたリカちゃんがこちらへと戻ってくる。俺が持っていた荷物を奪い、片手にそれを持ち直して空いた手で抱き寄せられた。
リカちゃんの唇が降ってきて、俺のそれに重なる。
「スーツ姿の慧君もいいけど普段着も似合ってる」
「リカちゃん………くっそ寒い」
「寒い?俺は慧君が傍にいるだけで身体が火照って熱いんだけどな」
そう言ってまた近づいてくるのを避けると、リカちゃんは口を尖らせて拗ねた。それすら寒い。
鳥肌の元凶である男を放って俺は部屋を出た。
近場で朝飯を済ました俺たちは、リカちゃんの着替えやら替えの下着を買う為にとりあえず街の中心まで行くことにした。
どうやら夕方まで時間を潰さなきゃいけないらしく、それなら何かしらある都心部に行こうって話に決まった。
車の窓から見えるのは全く知らない景色。流れゆく街並みも人も、どれも知らないものばかりだ。
きっと拓海ならわくわくするって笑うだろうし、歩なら平気なんだろうけど…俺はちょっと不安。
今ここでリカちゃんとはぐれたら1人。それこそ連絡がつかなくなってしまったら終わる。
迷子なんてレベルじゃすまない…遭難みたいなもんだ。
外を見つめて黙りこむ俺の手をリカちゃんが握った。
「慧君、提案なんだけど今日はずっと手繋いでおくっていうのどう?」
「は?」
「せっかくのクリスマスだし。ここには知り合いもいないんだから見られても問題ない」
「いや…男同士ってところが問題だろ」
正論を返した俺をリカちゃんはバカにしたように鼻で笑う。片方の眉をクイッと上げて俺を見下ろした。
「そうやって小さな枠にはまってちゃいい教師になれないぞ。いろんな生徒の相手すんのには臨機応変な考えが必要なんだからな」
「だからってお前は自由すぎると思う」
「どこが?」
「存在。リカちゃんは全部が自由だ」
それでも、どんなヤツでも上手く相手にできるんだから、やっぱりリカちゃんは教師に向いてると思う。
俺と違って器用なリカちゃんに少し嫉妬する。
その気持ちをこめてリカちゃんの手に爪を立てれば、ぴくんと手が震えた。
けれど、離れてはいかない。
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