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車の中でだけは繋がったままの手。降りたら放して、また戻って来たらどちらともなく重なる。
そして後部座席にあるのは大量の荷物…全部リカちゃんが買ったものだ。
今の俺は昨日、家から着てきた服を着ていて、リカちゃんに買ってもらった分は袋に戻してある。
履き替えたパンツも、お守りなんかにされないようにきちんとしまってある。
「微妙に時間余ったな…。どうするかなぁ」
ハンドルにもたれたリカちゃんがぼやく。
「リカちゃんさぁ、少しぐらい休憩したら?」
「休憩?なんで?」
「全然寝てないじゃん。ここに連れて来た理由も教えてくれないしワケわかんねぇ」
どこに連れていくのか、何しに行くのか全部が謎なまま。わかってる事と言えば、それは夕方から始まる…っていう事だけだ。
「別に教えてやってもいいんだけどさ…お前絶対にビビると思うんだよな」
俺を見たリカちゃんの目がそれでも知りたい?って聞いてくる。それに俺は迷うことなく頷いた。
けれどリカちゃんは黙ったまま、どこかに向かって車を走らせる。
街を抜け、しばらくすれば周りには大きな家ばかりが並ぶ住宅街へと入った。
その中にあったパーキングに車を停めて外へと出る。続いて降りた俺の肩にリカちゃんの手が回った。
「外では触らない約束だろ」
「逃げられたら困るから一応。ここまで来たらもう後戻り出来ないからな」
リカちゃんに促されるまま道を歩くこと数分。たくさんある家の中でも断トツに大きな屋敷の前に立った。
そこに掲げてある表札を指さしたリカちゃんが言う。
「ここ、俺の実家。正確には俺の父さんの実家」
俺の実家だって結構デカいと思う。でも、それすら小さく思えるほどの立派な家構えに喉が鳴った。だってその迫力が凄すぎるんだ。
高い塀に囲まれ、大きな門があって…その中に警備員みたいな人も数人見えた。リカちゃんから実家がそこそこ有名だってことは聞いていたけど、まさかここまですげぇ家だとは思ってなかった。
てっきり中に入るのかと思えば、リカちゃんは家の前を通り過ぎてしまう。
「え、見せたかっただけ?」
「なんであんなの見せたいってなるんだ?あそこに行くのはもう少し後…ちょっと散歩でもして時間潰さないとな」
「十分自慢になると思うけど。あんなデカい家テレビでしか見たことねぇよ」
まさに金持ちって感じの豪邸をあんなの呼ばわりしたリカちゃん。本気で自慢するつもりはないらしく、平然としている。
「別に俺がどうこうしたわけじゃないし昔からあるだけだから。それにもう関係なくなるんだから興味ない」
「関係なくなる??」
その言葉が不思議で見上げる俺にリカちゃんは笑って答えてくれない。時計を確認したリカちゃんが「そろそろいいかな」とやっと止まる。
「リカちゃん?」
俯いていた顔を上げたリカちゃんは怖いくらい真剣で、俺だけを見る。
「お前についてきてほしい所があって、会わせたい人がいる。俺1人じゃ出来ないことを今からするから一緒に来てほしい」
「俺に?」
「慧君にしか出来ないから。だからお願い」
なんの説明にもなってないのに、頷いてしまったのはリカちゃんが真っ直ぐだから。
いつも頼っていた人が俺を頼ってくれる。俺じゃないとダメだって言ってくれる。そんな言い方されたら断れるわけなんてなくて、俺は頷いた。
「俺は何をしたらいいんだよ」
「ただ俺の隣にいて、もし何か聞かれたら素直に答えてくれたらそれでいい。そんな大した事じゃないから」
「本当に?」
「俺は嘘はつかない。冬休みの課題より簡単だろ?」
どうやらその秘密主義なところは変えるつもりないらしい。でもきっとリカちゃんは俺を傷つけることはしない。
「わかった…でも後でちゃんと説明しろよ!」
リカちゃんは嘘をつかない。けどちょっと人とズレてるところがあって、嘘の代わりに上手くごまかす。
それを俺は思い知らされる。
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