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軽い散歩を終えて再び家の前へと戻る。すると、リカちゃんに気付いた警備員がやって来て門を開けてくれた。
やっぱりどう考えても普通ではない豪邸に俺の足は動かない。
そんな俺の手を握ったリカちゃんが微笑んだ。
「大丈夫だって」
「いや……迫力がな、なんか怖ぇんだけど」
俺たちが立っている門のところから少ししか見えない瓦屋根。ということは、家まで距離があるってことで…豪邸じゃない、これは大豪邸だ。それも純和風の。
隣にいるリカちゃんとは似合わない和風な家。でも掛かっているのは『獅子原』の表札。
「マジで行くの?」
「もちろん。もう俺たちが着いたのバレてるし」
リカちゃんの指さす先には監視カメラが回っていて、それも数台あって…俺は諦めるしかなかった。
一体この家でなんの用があるのか知らされないまま庭を抜ける。そこには高そうな車が何台も停まっていた。
「なあ。こんだけ駐車場広くてなんでパーキングに停めたんだ?」
家じゃなく少し離れたコインパーキングに車を停めたリカちゃん。それが不思議で聞いてみた。
「念の為にな。救いようのないバカってのは何するかわからないから」
リカちゃんの実家。救いようのないバカ……ここに居そうで、でもってリカちゃんが嫌っている人物はあの人しかいない。
きょろきょろと周りを探す俺を見たリカちゃんが吹き出した。
「いねぇよ。由良なら今頃最愛の婚約者さまとデートでもしてんじゃねぇの」
「婚約者?!」
「あれ?言ってなかったっけ?あいつ今年に入って婚約したんだよ。夏に俺が呼ばれたのもそれが理由」
あの由良さんが婚約…あんなにリカちゃんにこだわってる由良さんが他の人とだなんて信じられなかった。
「嘘だな。だってあの人、」
あの人リカちゃんのこと好きだろ、そう言おうとした言葉は途中で遮られる。
「家を継ぐのも婚約も、自分で決めたくせに八つ当たりとかやめてほしいよな。嫌なら断ればよかったのに」
「……リカちゃんってさマジで性格悪いよな。本当は気づいてんだろ?」
何にって、由良さんの気持ちにだ。
リカちゃんはそんな関係じゃない、付き合ってたつもりはないって言ってたけど…きっと由良さんは違う。由良さんはリカちゃんが好きで、でも振り向いてくれないから嫌がらせする。
興味が無いって言われたくないのは由良さんの本音なんだろう。
好きな人にどうでもいいって言われるのはキツイ。それなら嫌いだって言われた方がまだマシだと俺は思う。
そして、俺と似てる由良さんもきっとそうだ。
「理佳」
声がした方を見ると前から誰かが近づいてくる。
理佳っていう呼び方に、もしかしたら由良さん本人が来たと思った俺は咄嗟にリカちゃんの後ろに隠れた。
リカちゃんの後ろから見たその人は、由良さんじゃなく知らないおじさん。父さんより少し若く見えて、すげぇ優しそうに笑っている。
そんなおじさんがリカちゃんに話しかけた。
「予定を聞いてくるから何かと思えば…まさかここへ来るとは。クリスマスに来るってことは、とうとうフラれたか?」
「なんでそうなるんだよ」
「お前は口下手だから気の利いた言葉も言えないだろう?私がお前ぐらいの頃は、それはもうモテて誰とデートするか取り合いになったものだけど……ん?」
リカちゃんの背後から覗いていた俺とその人の目が合う。顎に手を当てたおじさんは、ふむ…と頷いた後にリカちゃんを見た。
「理佳。まさかお前…いや、父さんはお前をそんな子に育てた覚えはないんだがなぁ」
俺を見るおじさんの目がゆっくり細まる。目尻に皺を刻み柔らかく笑うけれど、口元は片方の口角だけを上げてニッと歪んでいた。
「初めまして。理佳の父です」
「えっ、あ…え?!」
リカちゃんの父親だって言ったおじさんが歩いて来る。背中に隠れていた俺を覗き込んで、リカちゃんの服を握っていた俺の手を掴んだ。
「聖なる日に舞い降りた天使……この後は私と熱い夜を過ごさないかい?」
ウインクを決めてクソ寒いセリフを言ったおじさんを、リカちゃんが容赦なく叩いた。
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