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なぜか俺を天使ちゃんと呼ぶリカちゃんのお父さん。それに諭されたリカちゃんが教えてくれる。
どうしてお爺さんがみんなの前でああやって突き放したのか…その優しすぎる意味を教えてくれる。
「爺さんの判断は正しい。ああやって見せつけるように言えば俺が勘当されたことはすぐに広まる。公にしなきゃ変に勘ぐるやつが出てくるからな」
「勘ぐる?」
「変な憶測で噂話がたつってこと」
「意味ぐらいわかる!俺が言ってんのはそういうことじゃねぇよ」
いくら俺だって、言葉の意味ぐらいはわかる。リカちゃんに抱えられながら暴れて抗議すると、俺を抱え直したリカちゃんが苦笑いしながら謝った。
そして、続きを話してくれる。
「話を有耶無耶にすると、実は全部嘘なんじゃないかって思われるかもしれないだろ。ここでは爺さんが絶対だから、その爺さんに切られた俺はもう戻ってこれないし関わりもない。それをハッキリさせる為に突き放してくれたんだよ」
リカちゃんが言った言葉にお父さんが頷き、俺の頭を撫でてくれた。
「理佳は父さんが1番気にかけていた孫だからねぇ。その理佳が決めたことなら反対するわけない。けれど理佳だけを庇うわけにはいかない…本当、ここには面倒な人達ばかりで嫌になる」
ため息をついたリカちゃんのお父さんは、すぐに元に戻って「まあ誰よりも早く家を出た私が言うべきではないね!」と明るく笑った。
その後にリカちゃんの肩をポン、と叩いた。
「最近じゃ由良が入って来て散々だったけどな。あいつが家を継ぐって決まったんなら爺さんは由良を優先するしかない。由良に協力するつもりのない俺を擁護するのはアウトだから」
歩きながら説明してくれるリカちゃんとお父さん。その話を聞いて、お爺さんが冷たくした意味とリカちゃんが礼を言った意味がわかった。
それぞれ大切なものがあって、その為には何かを諦めなきゃいけない。それがリカちゃんとお爺さんの間で一致したからこういう結果になった。
リカちゃんは俺の傍で教師を続ける為に。お爺さんは自分の守るべき家の為に。
それは仕方ないこととはいえ、悲しすぎる選択だと思う。
納得がいかず、俺は唇を尖らせた。それをリカちゃんが指でつつく。
「そんな顔するなって。別にここに来るなって言われただけで会わないとは言われてないだろ」
「そうだけど…でも、もっと他の方法だってあったんじゃないかって思う」
「過ぎた事をぐだぐだ言っても仕方ないだろ。そんな事より靴は履けるか?」
玄関で降ろしてもらった俺は、なんとか自力で靴を履いた。まだフラフラするからリカちゃんの服を掴んで外に出る。
庭の半分まで差し掛かったところでリカちゃんの足が止まった。俺の隣にいたお父さんがため息をついて苦笑いを浮かべる。
その理由は、たった今帰ってきた由良さんと鉢合わせてしまったからだ。
「思ったより早く帰って来たな。もしかして噂の婚約者様でも怒らせた?」
「お前俺のおらん間に…っ、そんなん俺聞いてへん!」
噛み合わないリカちゃんと由良さんの会話だけど、それ以上にそれぞれの表情が全然違う。
1人はニヤニヤしてて、1人は唇を噛み締めてる。どっちがリカちゃんかは言わなくても明らかだろう。
「誰がお前に相談なんかするか。いつも気付くのが遅いんだよバーカ」
挑発したリカちゃんに、由良さんの顔が歪んだ。
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