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「慧君慧君、正月はどこに初詣行く?せっかくだから遠出もいいよな」
「寒いから出かけたくない」
1人だと思ってたイベントの話をされるとやっぱり嬉しい。
せっかくの誘いを断っても、リカちゃんは嫌な顔なんてしない。
「別に一緒にいてくれたらいいんだけどな。それなら家でごろごろして、落ち着いてから行くか」
「桃ちゃん達と行ってきたらいいだろ」
「お前とじゃなきゃ意味がない。他のやつと行くくらいなら1人で行く」
ほしい言葉をくれるリカちゃんだから何でも許してしまう。嫌だって気持ちより、それでも好きだって気持ちが勝ってしまう。
「仕方ないからついて行ってやってもいい…けど」
語尾を濁らせた俺にリカちゃんはギュッと抱き付いた。
「嬉しい」
年上の男に甘えられてキュンってするなんて他人から見たら気持ち悪いんだろうなって思った。
今までは俺に甘えることなんて無かったリカちゃんが、ちょっとだけ隙を見せてくれた。
2人にあった見えない壁が薄くなったなって思う。まだ完全にはなくならないけど、急がずに俺たちのペースで進んでいけばいいって思える。
起き上がったリカちゃんが車から持ってきていた荷物に歩いて行く。手に取った袋は昨日買った服を入れていたもので、何をするんだろうって不思議に思いながら見ていた。
戻ってきたリカちゃんは俺の前に何かを置く。それは細長い封筒で白地に青と黒のラインが引かれていた。
「そのデザイン探すのに苦労した。この時期だからみんな赤と緑だもんな」
この配色が何を指しているか気付かないほど俺はバカじゃない。昨日の朝もこの色のマグでココア飲んできたんだし。それも下手くそな薄いココアを。
その封筒を見つめる俺をリカちゃんが覗き込む。
「まさか捨ててないよな?」
「捨ててねぇよ……まだな」
離れた直後は見るのも辛くて捨ててやろうかと思ったけど。でも出来なくて今もちゃんと棚に並べてある。
「まだってことは捨てようとしたんだ。慧君ってば冷たい」
「仕方ないだろ。もう使うことないかもって思ったんだし」
最後の方は言いたくなくて声が小さくなってしまった。俺の肩を抱き寄せたリカちゃんが、ぽんぽんと頭を撫でてくれる。
「帰ったらココアで乾杯するか」
「……甘いの嫌いなクセに」
「嫌いじゃなくて苦手なだけ。でもココアは好きになれると思う」
「意味わかんねぇんだけど。なんで苦手なのに好きになるんだよ?」
リカちゃんが俺の頬にチュッとキスをして、内緒話のように小声で言う。
「好きな子の好きなものだから。そういうところもお揃いがいい」
「お前……マジで重たいのな。それ言われたら普通はひくと思う」
「とか言って喜んじゃって可愛いね慧君」
甘さとキザさが何倍も増したリカちゃんに俺は呆れつつも、目の前に置かれた封筒に手を伸ばした。
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