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クリスマスが終わり3日が経った。
明後日からは初めての2人きりでの旅行…それも海外。あまりにも急すぎるスケジュールに、俺はリカちゃんに手伝ってもらいながら旅行の準備をしているところだ。
「お前さ…よく意外だって言われないか?」
そう言ってリカちゃんが手に取ったのは旅行雑誌の束。
参考書を買いに行ったついでに数冊買って、そして今朝も買い物のついでに何冊か買い足したもの。
あくまでも『ついで』だから。別に楽しみすぎて、ついつい買い過ぎたわけじゃない。
「同じような本こんなに必要ないだろ」
冷めた目でそれを見るリカちゃんに俺は言い返す。
「同じじゃねぇし!!!こっちは観光メインで、こっちは食べ物メイン!でもって、そっちの本は土産が詳しく載って、」
同じだって言われて咄嗟に出た言葉。マズいと思って口を閉じるが、既に出てしまった言葉は戻せない。
もちろん聞き逃すわけないリカちゃんがニヤニヤ笑いながら後ろから俺に抱き付いてくる。
「やけに詳しいね、慧君」
「別に…俺はただ……向こうで迷った時の為に」
「へぇ。それにしては多いと思うけどな」
俺を腕の中に抱えたままリカちゃんが雑誌に手を伸ばす。パラパラ捲ってすぐに閉じてしまった。
「まあこんなの見ても無駄だけど。この時期向こうはオフシーズンで観光地はほとんど封鎖されてるから」
行けない観光地を上げてくれるリカちゃん。それは俺でも知ってるぐらいメジャーな所で、どの雑誌にも載っていた所だった。
「え、そうなのか?」
「お前向こうの気温どれぐらいだと思ってんだよ…常に氷点下が当たり前なんだからな。何のために新しいダウン買ったと思ってんの?」
リカちゃんに買ってもらった新しいダウン。もこもこの高そうな、っつーか確実に高いダウンがハンガーにかけられている。ちなみに俺のやつが薄いグレーで…リカちゃんのが黒。
いわゆる色違いのお揃いだ。
「向こうではペアルックだね、慧君」
俺の意見など聞かず、勝手に用意していた男が嬉しそうに笑う。それを肩越しに横目で見た俺は、内心ちょっと心配していたことを聞いてみた。
「リカちゃんさぁ…クリスマスの時から金遣い荒くね?旅行の分だって全部出しちゃうし」
「当たり前だろ。なんでお前に出させるんだよ」
「でも……」
そんなに使っていいんだろうか。本当は無理してんじゃないかって疑ってしまう。
続きを言えない俺は、リカちゃんによって身体を反転させられ、正面から向かい合う形になった。
「変な心配すんなって。俺だってちゃんと考えてるから」
「それはわかってるけど、」
だとしても、年上だから無理してんじゃないのかなっていう気持ちは消えない。
俺に内緒で全部済ましてしまうリカちゃんだからこそ、ちゃんと聞いとかなきゃダメだと思った。
だって、リカちゃんはやめろって言っても俺を甘やかすから。
唸る俺の鼻を摘まんだリカちゃんがサラッと言う。
「それにマンションも売れたし前より余裕ある」
「マンション?リカちゃんマンションも持ってんの?!」
なんてことないように言ったリカちゃんを見た。こっちはこんなにも驚いているのに、本人は黙って瞬きをするだけだ。
「お前どんだけセレブなんだよ!!」
金持ちの家に生まれ高い車を乗り回し、まさかマンションまで持っていたなんて…セレブ過ぎるリカちゃんの秘密に、まるで漫画みたいだなんて思ってしまう。
「マンションってどんな?ここより大きい?」
「どんなって…同じだと思うけど」
「売る前に見たかったのに!!ってか、そんなの教えてくれてもいいだろ」
「教えるも見せるも何も、お前何度も来たことあるだろ。なんの話してんの?」
リカちゃんと俺の会話が全く嚙み合わない。
俺はリカちゃんが持ってるマンションなんて見た覚えないのに、リカちゃんは俺を連れて行ったことがあるって言う。
俺の中にある疑いが浮かんだ。
きっと、リカちゃんは俺と他の誰かを間違ってる。
そうに違いない。
今日の俺はすげぇ冴えてる。
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