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店の前で待っていた桃ちゃんと美馬さん、そして歩に拓海。現れた俺を見てみんなが口を揃えて言うのは「もう1人は?」のセリフだ。
「あんなヤツ知らない」
そっぽを向いてしまった俺に誰も話しかけられるはずはなく、黙ったまま店前にあったベンチに座る。
そして数分後、やっと現れたそいつがにこやかに手を振り歩いて来た。
「お待たせ。うちの奥さん着いてる?」
リカちゃんに聞かれた美馬さんが身体をずらして、座り込んでいる俺をリカちゃんに見せる。ゆっくりと俺の前に立ったリカちゃんが手を伸ばした。
きっと、また言い逃げしたことを怒られるんだと思った。
「電源まで切るなよ。心配した」
その手は叱る為じゃなく無事なのを確認する為の手。
ふんわりと頭を撫でるだけだ。
「俺に話しかけんな」
絶交した手前、リカちゃん手を振り払い近くにいた歩の後ろに隠れる。こういう時、俺より少し大きな身体は役に立つ。
「お前らの痴話喧嘩に俺を巻き込むなよ」
すっげぇ嫌そうな歩の身体を盾に、俺はリカちゃんと対峙した。
何を言われても「話しかけるな」「来るな」「触るな」と返す俺に、ため息をついたリカちゃんが桃ちゃんを見る。その頬には俺がつけた赤い切り傷がある。
「桃、これ言われてた書類。あとマジで鍵と壁紙変えなくていいのか?」
「いいわよ別に。あんたの部屋がどれだけ綺麗か知ってるもの」
「お前の隣に住むと思うと頭痛がするんだけどな…」
「ふふっ。これでいつでもパーティーが出来て楽しくなりそう!」
歩の影に隠れたままの俺に桃ちゃんがウインクを飛ばした。そして、リカちゃんから受け取った書類を掲げて見せ、満面の笑みで言った。
「来月からあたしがお隣さんになるの!仲良くしてね」
「…お隣さん??」
桃ちゃんの言った言葉を反復する俺に、気づけば後ろに立っていたリカちゃんが抱きついてくる。
「何すんだよ!!触るなって言っただろ!」
「だって寒いから。車だしと思って薄着で来たからさぁ…ほら、鳥飼も寒そうにしてる」
リカちゃんに言われて拓海を見ると、手を擦り合わせ寒さを耐えていた。隣に立つ美馬さんが巻いていたマフラーを拓海に貸してあげる。
「…っくしゅ」
「ほらもう。豊さん病み上がりなんだから温かくしとかなきゃ」
「でもこのままだと拓海くんが…!」
そんな2人を見ていると、これ以上ここで言い合うのも申し訳なくて口を噤む。
さすがのリカちゃんも抱きしめたまま店に入るのはマズいとわかっているのか離れた。
それはそれで気に入らないと思った俺は、すっかり冷えきった手をリカちゃんの服の中に入れる。
素肌を、冷たい手で容赦なく触ってやった。
「冷たっ……慧君、いたずらはやめなさい」
「偉そうに命令すんな」
リカちゃんなんか、風邪ひいてずっと引っ越しできなくなればいいと思った。
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