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「………はぁ?」
リカちゃんの言葉に、思わず気の抜けた声が出た。
開いた口が塞がらないままの口に歩がすかさずプチトマトを放り込むが、それが嫌いな俺は行儀が悪いけど出して自分の取り皿に置く。
「俺のことが大好きな慧君だから喜ぶと思ったのに。何その反応」
リカちゃんがそのプチトマトを掴み、唇に咥えた。よく他人の口に1回入ったやつを平気で食えるな…って絶対にわざとなんだろうけど。見せつけるようにして唇に挟んだトマトをくるくる回して遊ぶ。
「リカちゃん引っ越すんじゃねぇの?」
「隣でも引っ越しは引っ越しだろ」
ようやく辱めていたトマトを、口の中に消したリカちゃんが俺の顎を自分の指で持ち上げた。それも人差し指だけっていうキザな方法でだ。
「慧君さぁ、俺と一緒に暮らしたくない?毎朝起こしてあげるし家事も得意。なんなら風呂も入れてやるし寝る時には子守歌も歌ってあげる」
「あ、え……ってそれ今と変わらない気がすんだけど」
「全然違う。2人の家に2人で住んで2人で暮らす。俺と慧の家になるってこと」
今と大して変わらないはずなのに、2人でって言われるとなんだかくすぐったい気持ちになる。
朝起きたらリカちゃんがいて、夜もいて、休みの日もいて。
ずっと一緒って思うと顔が緩みそうになって必死に我慢する。
「でも俺の家じゃなくて父さんの、だし」
父さんが用意してくれたマンションんだから勝手にはダメ…ってのは建前で、もう俺の中では答えが出てるんだけど。
一応は躊躇うフリをした俺に、リカちゃんが深く笑う。
「もう許可は得てる。折半で支払うってことで話はついてるから心配しなくていい」
「でも学校にバレたら…」
「それも今さらだろ」
父さんの許可もとって、自分の部屋はもう買い手を見つけて…って用意周到すぎて驚いた。
「慧君、俺と一緒はそんなに嫌?」
顎を支えていた指が1本から2本、3本と増えていつの間にか掴まれる形に変わっていた。
「嫌じゃない…けど。リカちゃんはそれでいいのか?」
「なんで?」
「だって今より自由な時間減るし」
俺は自分で束縛魔だって自覚があるし、いざ一緒に住むってなるともっとリカちゃんの行動にうるさくなると思う。いつ帰ってくるんだ、どこに行くんだって聞いちゃう自信がある。
それでもいいのかって意味で聞いた俺にリカちゃんは顔を近づけて、息がかかる距離で答えた。
「そんな時間があるなら1秒でも長く慧君に触れていたい」
「リカちゃ───ッ」
俺の声は喉の奥に消えた。
唇が触れたと思ったら瞬時に出てきた舌でそれをこじ開けられ、中へと入ってくる。
あたたかい感触と、さっきまで吸ってたタバコの苦味と、そして水っぽく酸っぱい何か。
酸っぱくて…ちょっとブツブツしてて、でもってなんか青臭いような。
俺の大っ嫌いなアレの味がする。
「んーっ!!!!!」
ドンと突き飛ばしたリカちゃんが濡れた唇を拭った。肩を震わせて笑う。
俺は手元にあったグラスを一気に飲み干した。それでも口の中の味は消えないどころか、なぜか余計に変な味になった。
「おまっ……最悪!」
「こうやって嫌いな物も食べれるようにしてやるから」
俺にトマトを口移すという暴挙に出た男を睨みつける。
まさかこの雰囲気でそんな意地悪するなんて思わなかったのに…!!!
こんな、こんな……って考えて、今自分がどこにいるのかを思い出す。
向かいの席には無表情の歩と呆れきってる桃ちゃん。そしてメニュー表で顔を隠す拓海。
みんなの前でまたやってしまったと顔を隠す俺に、隣から低い声がかかる。
リカちゃんとは真逆の渋い声が。
「ウサギ君……さっき飲んだの俺の酒なんだが。一気飲みして大丈夫なのか?」
「酒…って美馬さん、の?」
だから変な味がしたんだ。
水だと思って一気に飲み干したそれが身体を巡る。酒だって聞かされたら、もっと回りが早くなったような気もしてきて身体が熱くなっていくのを感じた。
「ちなみに豊…その酒って何?」
ふらつく俺の身体を支えてくれたリカちゃんが美馬さんに聞く。
「焼酎ロック。何度も頼むのが面倒だからグラスで頼んだんだが…すまん」
自分は悪くないのに謝る美馬さん。真面目なその顔がぼやけて、目を強く瞑る。
次に目を開けた時、美馬さんは3人に増えていた。
俺は、慣れない酒を一気飲みして完全に酔っぱらってしまったのだった。
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