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しばらくするとウサギが目を閉じ眠りについた。時間を見ればそろそろ10時を回るところ。横にしてやろうとしても握りしめたままの手は解けず、諦めてそのままの体勢でコートをかけてやる。
タバコを吸いたい気持ちを我慢して紛らわす為に、ウサギの毛を指に巻き付けて遊ぶ。
1人でワインをあけていた桃が空になったボトルを置き、俺を見た。
「仲直りした途端に旅行、その後は同棲って本当に抜かりないわね、あんた」
「何が?」
「全部初めから計画してたんでしょ。こんなに立て続けに何かが起きてちゃウサギちゃんはあんたに頼るしかないもの」
咎めるような桃の視線が突き刺さる。
それもそのはず、今回の件で桃にはだいぶ世話になった。法的な手続きは全て任せたし、俺が出来ない分のウサギのフォローもしてもらった。
その度に小言を言われたけれど、最後にはきっちり仕上げてくれる。何度もやり過ぎだって心配してくれた桃に俺は耳を貸さず突っ切った。
少しでも立ち止まってしまえば、迷いが生じるからだ。
険しい表情の桃に俺は答える。
「終わりが良ければいいんだよ。もう誰にも邪魔されなくなったんだから俺の作戦勝ちだろ?」
「そうやって大々的に見せつけたら誰だって喜ぶものね。全部捨てて君を選ぶよって今時ドラマでもやんないわよ」
顔を顰めて桃が言い捨てた。
根本が真面目なこいつには、今回の俺の行動は許しがたいんだろう。
ウサギにとって家族はとても特別な存在で、身近にないから憧れるものでもある。それを捨てて自分を選んだ俺にのめり込んでしまうのは当然だ。全て俺が自分から望んでしたことなのに、ウサギは少なからず自分の所為だと思っている…けれどそれすら計算のうちでもある。
それでも、諦めなきゃいけないと思った時の苦しみに比べれば卑怯だと責められるのなんて可愛いものだ。
「でもそれが結果的に最善になった。何か問題ある?」
否定できない桃が悔しそうに眉を顰める。
ウサギ本人さえ真実を知らなければ、俺は一途に待ち続け、誠意を見せた『完璧』な恋人でいられる。求められているものに応えることが出来る。
身じろいだ恋人を抱え直すと、ふんわりと自分と同じ匂いがして、触れ合った身体よりも心があたたかくなる。
「これが俺の愛し方だって言っただろ。逃げられなくするんじゃなくて、逃げたくないって思わせんの。それを誰に何て言われようが、慧以外はどうでもいい」
歩と桃が白けた顔で見てくるのに対し、思わず苦笑が漏れた。
きっと2人からしたら俺の愛し方は異常で理解できないだろう。でも、誰にわかってもらえなくてもいい。
すやすや寝息をたてるウサギの身体に回した手。そこから伝わってくる体温と微かな振動が、ひどく心地良くて頬ずりしながら名前を呼ぶ。
「んー……リカちゃ」
返事だと思ったそれはどうやら寝言だったようで、ウサギは腕の中、深い場所へと潜ってしまう。
俺にしか見せない安心しきった表情と甘える仕草が愛しい。あまりに幸せすぎて緩んだ口元が元に戻らない。
「……もうこれは病気だわ。ここまでいくと治らない」
「っつーより治す気ないでしょ。それより拓海と美馬さんが兄貴完全に無視してんのがすげぇ」
なんだかんだ言いつつ仲よさげな桃と歩も。
「気にしたらきりがないからな」
「エロ以外なら慣れたもん。それより豊さんエビ剥くのすっげぇ上手!!!」
涼しい顔しながらも鳥飼の機嫌をとる豊に、最近少し性格が変わってきた鳥飼も。
誰にも文句は言わせない。誰にも邪魔させない。
「う…ん、リカちゃん……あと5分だけ…」
寝言で俺を呼ぶ慧君に答える。
「5分じゃなくてずっとって言ったろ?」
すると慧君は、ふにゃりと嬉しそうに笑った。
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