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本格的に眠ってしまったウサギを抱え俺は店を出た。助手席に横たえた身体から伸びる手が、俺のコートを掴んで離さない。
真冬に上着無しはかなり寒い。
「今からうちで2次会するけど…って聞くだけ無駄よね」
自分で答えを出した桃に頷き、運転席へ乗り込む。みんながタクシーを拾ったのを確認してから車を出した。
ウサギが起きないよう慎重に運転し、行きの倍近くかけてマンションへと戻る。
駐車場に車を停め、エンジンを切っても全く起きる素振りは見せなかった。
「慧、着いたぞ」
「うー…ん」
唸るだけで瞼が開くことはなく、またコートにくるまってすやすやと寝息を立ててしまう。
「仕方ない、か……」
慣れない酒を一気に飲んだのだから当然だろう。もしこれが自分だったら確実に潰れてたはずだ。
コートに包まった身体を抱きかかえる。落とさないよう注意してマンションのエントランスまで向かい、エレベーターを待った。
降りてきた住人が俺たちを見て少し驚き、それに会釈を返す。
何も知らない他人から見た俺たちは、歳の離れた似ていない兄弟…もしくは親戚といった関係に見えるのかもしれない。
まさか教師と生徒で恋人だなんて関係だとは思わないだろう。
別にお互いがわかっていれば、肩書きなんてなんでもいいとは思う。わざわざ同性だけど付き合ってるなんて口外する必要はないし、それに伴うリスクを考えないほど子供でもない。
けれど同時に認めてほしいとも思う。もう誰にも邪魔されないよう、名実ともに独占したい。
冷静に考えれば自分のしていることは倫理に反していると思う。
ここ数週間のことを考えていればエレベーターが目的の階へと着く。もちろんこの状態のウサギを1人になんて出来るわけなどなく、俺は迷うことなく自分の家の扉を開けた。
少しずつ片し始めた部屋。段ボールの間を抜け、寝室まで向かう。
入った部屋の片隅に捨てることのできない塊…眠れない時に集めに集めた、うさぎのぬいぐるみがいた。それを見て見ぬふりして本物のウサギをベッドへと横たえる。
身体を離した途端、ウサギの目がぼんやりと開く。
「っ……ここ、どこ?」
「家。起きたなら何か飲むか?」
頷いたウサギに水でも持って来てやろうと寝室を出る。キッチンで用意してると何かが俺の腰抱き付いてきた。
その何か、というより誰かは1人しかいない。
「慧君、どうした?」
「寒い」
「あぁ…それなら暖房入れてやるから布団にくるまって待ってろよ」
抱きついたままウサギが首を振る。けれど寒いと小刻みに震えていた。
その身体を胸の中に抱え込む。
「風邪ひくから言うこと聞けってば」
「やだ」
「体調崩したら旅行に行けなくなるけどいいの?」
「…やだ。絶対にやだ」
始まった慧君のやだやだ攻撃。離れるのはやだ、寒いのもやだ、そして風邪ひくのもやだ。
やだやだを繰り返し、言うことを聞いてくれない慧君に少し困ってしまう。可愛いんだけど心配だし…でも文句なく可愛い。
俺の身体にすり寄ってくる頬を抓る。
「何すんだよ!!」
「いや、可愛いなと思って」
むっと眉を寄せ、でも言い返してこない。これが素面ならば可愛いって言うなと怒るくせに、まだ少し残った酒の所為で素直になってくれる。
けれどその素直さは喜べるだけでは済まない。
「寒いから風呂入る」
「は?その状態で?酒入ってんだから駄目」
「やだ入る。入るったら入る」
「駄目ったら駄目」
今度は風呂に入ると駄々をこね、暴れ出す。暴れながらどんどん服を脱いでいくのを止めるのに必死な俺に、うちの亭主関白な奥さんは強硬手段に出た。
「リカちゃんも一緒に入ればいいだろ」
「一緒……って一緒に風呂に入るってこと?俺と慧君が?」
こくんと頷く慧君に俺がとる行動は決まっている。
すぐさま風呂に湯を張り、湯冷めしないよう部屋の温度を上げて寝間着も用意した。なんならこんな時の為にと買い置きしていた入浴剤も入れてやった。
「慧君、用意できたよ」
「おう」
満面の笑みで慧君を呼ぶと、素直に浴室へと向かう。
普段なら絶対に一緒に入ってくれない。どれだけ頼んでも首を縦に振ってくれない慧君が、自分から一緒に入ると言った入浴タイム。
先に向かった慧君を追いかける俺の足取りはとても軽かった。
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