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授業が終わって俺と歩は並んで廊下を歩いていた。向かう先は拓海の教室、階段を挟んで2つ隣にあるところだ。
窓から中を覗けば楽しそうに笑っている拓海を見つける。拓海の周りには何人かが集まっていて、騒がしいその声に歩の眉間に皺が寄る。
そんな歩が低い声で言った。
「世の中が拓海ばっかりだったら俺は間違いなく引きこもる」
「お前は今でもほとんど家にいるだろ。どこにも行きたがらないって桃ちゃんが前に言ってたぞ」
「俺うるさいのマジ無理だから。なんの用もねぇのに外に出る意味ってあるか?」
世間ではそれをデートって言うんじゃないだろうか。同じ兄弟でもリカちゃんと歩は違うよな…なんて考えながら、俺は黙って拓海を見つめた。そして歩も同じように黙っている。
違うクラス、話したことないヤツばっかり、騒がしい教室。これが揃っていて俺たちが拓海を呼べるわけない。
なぜなら俺も歩も人が嫌いだからだ。
「なあ、どうする?」
歩に聞けばポケットからスマホを取り出した。
「電話すればいいことだろ。お前ここから話しかけれんの?」
「やだ。絶対にやだ」
画面を操作した歩がそれを耳に当てた。少し待っていると拓海が電話に気づく。
「もっしもーし」
「前」
一言だけ告げて切ってしまった歩。不思議そうな拓海がこちらを向き、苦笑いを浮かべ鞄を手に取った。周りのヤツらに挨拶をして、ようやく拓海が合流した。
「なんでわざわざ電話?普通に呼べばいいだけじゃん」
「呼んだし、お前らがうるさいから聞こえなかったんだろ」
しれっとした顔で嘘をつく歩と、すっかり騙されて謝ってくる拓海。いつもの3人で昇降口へ向かっている途中、すれ違いざまに聞こえた会話に俺は耳を奪われた。
「俺初めてリカちゃん先生の授業受けたんだけどさ、なんか…すごかった」
「すごかったって何が?」
「問題集やらされたんだけど、ここに何が入るかわかるか?って聞かれて、答えたらちゃんと出来ていい子だ…って。なんだろ、普通の会話なのにドキドキした」
「お前バカじゃねぇの。男相手にドキドキって」
全くもって聞き捨てならない、そんな会話に。
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