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思わず立ち止まってしまった俺は、その会話に聞き耳を立てる。
この学校にリカちゃん先生なんてふざけた名前の教師はアイツしかいないし、男子高校生相手に『いい子』だなんて寒いこと言うのはアイツ以外考えられない。
ということは、今聞こえた会話の内容は、あのリカちゃんのことだ。
拓海と歩が前を行くが、それどころじゃない俺はじっと突っ立ったまま盗み聞きを続ける。
「噂では聞いてたんだけどマジやばいな。俺が女だったら確実に落ちてる」
「とか言ってリカちゃん先生ならアリかなとか思ってんだろ。もし先生に告られたらオッケーするくせに」
「バッ…!し、しねぇよ!!!」
焦ったような声が聞こえて、ゲラゲラ笑いながらそいつらは去って行った。あの否定の仕方はまんざらでもない…っつーか否定じゃない。
俺の知らないところで、俺の知らないヤツに愛想を振りまき、俺の知らないリカちゃんの話をされるのが気に食わない。
クラスが違って授業も違って学校じゃ殆ど会わない上に家でもすれ違い。これじゃ忙しくて構ってもらえず、その結果誕生日前にケンカした去年と一緒だ。
いや、それよりも悪い。
もう誰もいない廊下の先を睨んで威嚇しても意味が無く、俺のライバルになるかもしれないヤツの顔すらわからない。
苛立つ気持ちを必死に抑える俺に誰かが話しかける。
「おい迷子のバカウサギ。兄貴と一緒にいすぎてお前まで方向音痴になったのか?」
「あ?」
「学校で迷うなんて救いようねぇな、お前」
「迷ってねぇよ!!!!」
それは、一向について来ない俺を待ちわびた歩だった。バカにされて睨みつけ言い返した俺を歩は無視し、拓海を連れて行ってしまう。
「待てよ!」
呼び止めても待ってくれるわけない背中。キラッキラの金髪が眩しくて余計にイライラが溜まってしまった。
その日の夜、リカちゃんが帰ってきたのは俺が風呂に入ってテレビを観ていたときだった。そのまま風呂に直行し、上がってキッチンで一服した後に仕事部屋へ向かう。
話したことといえば飯は食べたかっていうのだけ。
ただいまもおかえりも、おやすみのちゅーもしない…って自分から言い出したくせに、それは嘘にならないんだろうか。
1人でベッドに寝転がっても寝つけなくてスマホに手が伸びてしまう。
ゲームはする気にならず、かといって拓海はもう寝てるだろうし歩に電話する気にもならないし…。
俺はダメ元で指を動かす。忙しいなら見ないだろうし、見たとしても返ってくるのは直接じゃなく文章だし。
理由をつけて送ったメールは、同じ家にいるアイツの元に届く。
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