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首輪と言われて思い浮かぶのは2つ。1つは犬猫につける本物で、もう1つは恋人同士で付け合うアレ。前者ではないのは確実だけど後者だとも思いたくない。
なぜなら俺は教師だから。
どこの世界に首に堂々とキスマークを付けて授業するやつがいる?そんなやつに注意されたって誰も話を聞くわけなどない。
それなのに俺を見下ろすウサギの顔はいたって真剣だった。飲み込んだ唾がゴクリと喉を滑り落ちていく。
ネクタイを奪われ、すっきりした首元にウサギの指先が当たる。子供体温の暖かい肌が気持ちいい、だなんて思ってる場合じゃない。
咄嗟にその指を掴むと、ワガママを爆発させたウサギは不機嫌さを隠そうともせず睨んでくる。
「離せよ」
「いや、離したらどうする気?」
「首輪付けるって言っただろ」
言葉で伝えて駄目なら実力行使。あまり荒々しいことはしたくないけれど、やむを得ない事態にウサギの指を止める手の力を強める。
「っ、痛」
けれど痛そうに顔を顰めたのを見て手を離してしまった。拘束がなくなったことで、ウサギの行動は、より大胆になる。
普段はぼんやりしているくせに、こういう時だけ素早いのはなぜだろう。屈んだウサギが俺の首筋に顔を寄せた。
頭で考えるのは何て言い訳しよう…だとか、もしかしたらジャージの襟を立てれば隠せるんじゃないか、とか案外冷静なことばかり。
これはもうきっと惚れた弱みだ。
慧が嫌がることはしたくない、したいことは叶えてやりたい。それをフォローするのが自分の役目なのだから今回だって上手く乗り切ってみせる。
諦めて力を抜いた俺の首にウサギが手を回す。しがみついて付けるなんて、どれほど強く濃い痕を残す気なのか、その仕草に笑いさえ出る。
おそらく訪れるであろう痛みに、耐える準備をし始めた俺が感じたのは痛みなんかじゃなかった。
ゴソゴソと身体の上ので動いていたウサギが離れていき、少し間を開けてじっと見つめられる。
動き続けていたウサギの手がやっと止まったとき、目の前に広がったのは満足そうな、そして嬉しそうな笑顔。
「出来た……うん、似合う」
その視線の先は俺の首から胸元にかけて。数回頷いた後に座り直したウサギが白けた目で俺を見た。
「いつまで寝てんだよ。狭いんだから起きろ」
「押し倒したのは慧君なんだけどな…お前、一体何がしたいんだ?」
「何ってもう終わったから自分で見れば」
ツンとそらされた顔。
ウサギの手が触れていた場所には、さっきまでは無かった物があった。
今度はグレーじゃなくて青色のそれを手に取る。これを締めてくれた張本人は、素っ気なくスマホを弄っているが、その指は全く動いておらず耳が赤い。
まるでこのネクタイに描かれたコイツのように可愛らしい耳が覗いている。
「これって慧君が描いてくれた絵?」
青地に小さなイラスト。
どうしてこの絵にしたのかはわからないけれど、確実にプロではない仕上がりのそれに頬は緩む。
頷いたウサギを抱きしめようと両手を伸ばすと、珍しく向こうからも寄ってきてくれた。
それが嬉しくて、俺はついサービスしてしまう。
しなくていい、するべきでないサービスを。
「なんで宇宙人が吐血してんのかは知らないけど、斬新的なイラスト描いちゃう慧君も堪らないな」
「……宇宙、人?」
「この尖った耳に真っ白な身体、妙に長い手足は宇宙人だろ?何、今って高校生の間で宇宙人が流行ってんの?」
寄りそっていた身体がピタッと止まり、その肩が震える。そして上げられた顔は、ここ最近見た中で1番の睨み顔だった。
「それはウサギだ!!!!」
字を書くのが苦手なウサギさんは、絵を描くのはもっと苦手らしい。どう見てもウサギに思えないイラストと、怒り爆発の慧君を見比べ俺は口元を押さえた。
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