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昨日の合コンに来ていたメンバーは幸のバイト先のホストと、違う大学の女ばかりらしい。なので俺が昨日人生初めての合コンをしたことは、誰も知らない。それなのに妙にソワソワしてしまうのは俺の気が小さいからじゃなく、鳴らないスマホのせいだ。
歩にとにかく電源はつけておけと釘をさされ、やっと使えるようになった俺のスマホ。
授業の間の休み時間、昼休み、それに空き時間。全く連絡できない状況なんて無いはずなのに、リカちゃんからの連絡が来ない。
今日の朝に来ていたらしい「大学はちゃんと行くように」を最後に何もアクションを起こしてこない。
とうとう全ての講義が終わり、後は帰るだけになってしまった。けれど、まだ心の準備ができていない俺は、幸を連れて大学内にあるカフェで時間を潰している。
ボタンを押しても映るのはホーム画面だけで、俺はそれをつけたり消したりする。そんなことをしても、残り少ない充電が減っていくだけで何も変わらない。
「ウサマル、不幸のオーラ出すんやめてくれへん?」
隣で来週提出予定のレポートをまとめている幸が俺を見ずに言う。
視力を悪くしたくないからって、それ用の眼鏡をかけているイケメン。
「いくら幸がイケメンでも、あいつの方が眼鏡似合う」
「は?なんなん、いきなり失礼するやろ…ってか、あいつって誰やねん。歩か?」
思ったことが口から出てしまったけれど、訂正するのも面倒で放置した。
幸が不満そうな顔をしても、俺はそれを無視してスマホをまたつける。
「そんなに気になるんやったら先に謝ったらええやん。で、帰ってから必死に言い訳して許してもらい」
「言い訳って……なんのだよ。飲み会に行くってことは言ってあるし、幸の家に泊まるとも連絡してたんだから問題ないだろ」
「そう思うんなら堂々としとけば?でも、そうじゃないから気にしてんねやろ」
ホストだからなのか、それとも年上だからなのか幸の言うことは鋭い。歩に同じことを言われるとバカにされた気になるのに、幸なら何も言い返せない。
唸りながらテーブルに突っ伏すと、俺の頭を幸が優しく撫でる。リカちゃんとは違う、しっかり強めに触れる手つきに、俺は顔だけを横に向けて幸と視線を合わせた。
すると、目が合った途端に幸が吹き出す。
「ウサマル、その顔めっちゃ不細工やで。ほとんど目開いてへんやん」
「うるさい。俺は元々こういう顔なんだよ。お前らみたいなキラキラ生物と一緒にすんな」
「いやいや、お前ほんま仲良くなったら性格変わるな。初めて見た時、どこのお坊ちゃんが紛れこんだんかと思ったのに……喋ったらただの生意気な子供やもん」
「子供って言うな!!俺はもう子供じゃない!」
撫でていた幸の手を掴み、抓ってやる。そこそこに力を入れたはずなのに、幸は痛がるどころか笑ったまま俺を見る。
「お前なんで笑ってんだよ。少しは怒ったらいいだろ」
「俺がウサマルのこと怒る必要ないやん。それに、ウサマルが怒ってほしいんは1人だけやしな」
「は?俺、別にリカちゃんに怒られたいとか思ってないし」
「えー……俺そんなん言うてへんくない?誰の名前も出してへんねんけど」
またからかわれ、悔しくて幸の手に爪をたてた。今度はさすがに痛かったらしく、やめろって言われたけど、それも笑い混じりだ。
テーブルに乗せた腕に顔を埋め、声にならない呻きを上げる。この後が不安で仕方なくて、けど帰らないと何も始まらないことはわかっていて。
「ああ……俺どうしよう…出てけとか言われんのかも」
独り言のような呟きに、幸の手がまた俺の頭に乗った。 ポン、ポンとタイミングよく撫でられると、入っていた力が抜けてくるから不思議だ。
「大丈夫やって。そりゃ怒られるやろけど、ウサマルが不安になるようなことなんて起きへんて」
「そんなのお前にわかんねぇだろ」
「…………ほんまにアホ。ってか、ウサマルいつまで指輪外してんの?」
幸に言われて思い出した存在。合コンの時は外していたシルバーのそれを取り出そうと、指輪をなおしていた財布を開く。
そして固まった。
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