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「──っ、だから!!なんでリカちゃんは全部自分が悪いみたいに言うんだよ?!誰もそんなこと言ってないだろ?!」
「俺は悪くないって言った。慧が悪くないなら、悪いのは俺ってことになるだろ?」
「誰もそんなこと言ってない!!」
「いや、今さっき言ったばかりで……」
「うっせぇ!!」
苛々する。とにかく苛々して、認められても腹が立つし、言い返されても腹が立つ。もう何を言われても、この怒りを抑えることはできない。
俺は、今日までたくさん我慢した。鹿賀が家に来た時も、リカちゃんが拗ねた時も、鹿賀とリカちゃんが仲良くなった時も。たくさん、たくさん我慢した。
やっと少しだけ鹿賀と打ち解けたかと思ったら、今度は俺が悪いみたいに言われる。リカちゃんが無理に迫った時も我慢したのに、どうして俺が悪いって言われなきゃならないんだろう。
言葉で悪いとは言われていなくても、態度で伝わるリカちゃんからの非難。それが気に入らなくて、怒りが止まらない。
「だいたい、リカちゃんが鹿賀を家に入れなきゃこうならなかった!!」
「今さらその話?」
「元はそこから始まっただろ?!一緒に住んでたら、話ぐらいする。リカちゃんだって同じじゃねぇかよ」
「俺と慧は違う。そうやって何も知らないで入れ込んで、いつか困るのはお前だって、わからないのか?」
どんどんヒートアップしていく言い合い。怒鳴る俺に冷静に返すリカちゃんだけど、その声はいつもより大きかった。だから心配した歩が寝室から出てきて、俺たちの傍まで来る。
「おい、なんで兄貴と慧が言い合いしてんだよ。出て行ったやつなんか放っておいて、いい加減その辺りでやめとけって」
その歩の一言がまた余計だ。歩だって関係ないくせに、鹿賀のことを悪く言うのが苛立つ。
「歩もリカちゃんも、冷たすぎる!人に優しくできないやつが、俺に偉そうに言うんじゃねぇ!」
歩まで巻き込んで進む言い合い。とは言っても、言い合ってるのは俺と歩だけで、いつの間にかリカちゃんは俺たちを止めようと間に立っている。
「前から思ってたけど、なんで歩が出てくるんだよ!これは俺とリカちゃんの問題だろ!!」
「お前がバカで周りが見えてないからだろ。自分の言ってること、ちゃんと理解してから喋れよ」
「あぁ?!俺はちゃんと見てる!見てるからお前らと違って、相手のことを考えてんだろうが!」
「じゃあなんで幸と兄貴を比べてんの?なんで兄貴に幸の代わりをさせようとすんだよ。お前の言ってる相手って、いつも兄貴以外だって気づけよ!」
「比べてない!!」
「比べてるだろ!」
全く伝わらない気持ちと言葉。一方通行どころか、反対を向いてしまっているかのような状況に、俺は歩と俺の間に立つリカちゃんを見上げる。
「リカちゃんは俺と歩、どっちが間違ってると思うんだよ?!」
聞きながらも、リカちゃんなら間違いなく俺の味方をしてくれる自信があった。歩にいい加減にしろと言って、俺にも言い過ぎだって言って。
リカちゃんなら間に立ちつつも俺を庇ってくれると思ってた。
けれどリカちゃんの口から出たのは、ため息だけで答えは返ってこない。
それが最後の決め手となった。そっちがその気なら、俺にだって考えがある。
「もういい。こんな家、出て行ってやる!」
財布とスマホだけを持って早足で出て行く。背後から呼び止める声が聞こえて、靴を履いている時にさりげなく振り返って見た。
俺を止めていたのは、歩だけだった。
その時のリカちゃんの表情は、正直覚えていない。
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