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「それで今日は急にどうした?俺ちゃんとした理由教えてもらってないんだけど」
生首を見つめている鹿賀はさておき、拓海が訊ねてくる。本当は鹿賀の前で言いたくないけれど、言わなきゃ拓海は泊めてくれないだろう。普段はバカなくせに、こういうところは強気な拓海だ。
「喧嘩した」
「喧嘩って誰と?」
「……リカちゃん」
俺の言葉に鹿賀が顔を上げる。そこには「またか」と書かれているような気がして、少しだけ気まずい。別に鹿賀が原因じゃないけど始まりは鹿賀だし、けど大事なところに鹿賀は関係ないし。
だからその視線には気づかないふりをして拓海を見た。
「多分、歩とも喧嘩したんだと思う」
言った俺に拓海が首を傾げる。
「多分ってなに?」
「わかんねぇけど。いきなりリモコン投げられて、いきなり怒鳴られたから喧嘩した」
「慧の説明じゃ全然わかんない。喧嘩したばっかりで内容がないし、だいたい歩はそんなに荒いことしないだろ」
「でもされた」
進まない話に拓海がため息をついた。それをつきたいのは俺の方なのに…なんか嫌な感じだ。
「慧」
俺を呼んだ拓海が難しい顔をする。
「歩は口は悪いけど理由なく怒ったりしない。それはリカちゃん先生もだし、もし慧が言ったように喧嘩なら相当の理由があるはずだよ」
そんなのわかんない……こともない。
何が原因かはわかっているけど、どうして怒られたのかがわからないけだ。それは一緒のようで少し違う。
だから黙って拓海を見つめる。すると拓海は鹿賀の方を見て口を開いた。
「鹿賀っち。悪いんだけどコンビニ行ってアイス買って来て。俺、妹のアイス食べちゃって、それが明日バレたらすげぇ怒られるんだよ」
「アイス、ですか?」
「家出て右にまっすぐ行ったら看板見えるから。あ、慧の奢りだから鹿賀っちも好きなの買っていいよ」
俺に断りもなく言いやがった拓海と、戸惑う鹿賀の視線が向けられる。今ここで1番強いのは拓海で、決定権は拓海にある。だから仕方なく財布を鹿賀に渡すと、なかなか受け取らない。
「なんだよ、早くとれよ」
そう言っても手を出さない鹿賀に焦れる。それを制したのは拓海だった。
「慧、いくらなんでも財布ごと渡すのは変だろ」
「そうか?いつもリカちゃんは財布ごとくれるんだけど」
「それは慧とリカちゃん先生だから成り立つんだって。鹿賀っちと慧はまた別。同じように考えたら駄目」
なんだかよくわからないけど、拓海の言った通り金だけを鹿賀に渡した。
素直に部屋を出て行った鹿賀を見送り、玄関の扉が閉まる音が聞こえたところで、拓海の表情が変わる。
「ほら、これで話せるだろ?」
「え……まさかアイスの話って嘘だったのか?」
「当たり前だろ。どこに小学生の妹のアイスを盗み食いするやつがいるんだよ」
本当は食べられたのは俺の方だと続けて笑った拓海は、専門学校に通い出して黒たっくんが増したのかもしれない。
拓海の家に来たことを少しだけ後悔した。
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