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鹿賀の熱弁により、とりあえず頷いた俺は今後のことを考えなきゃいけない。リカちゃんの気持ちを疑うことはないけれど、だからといって俺が悪いとは認めたくない。
頑なに秘密を貫くリカちゃん。きっと意味はあるのだろうけど、それがわからなくてモヤモヤする。
「うーん……なんだかなぁ。なんか今回のリカちゃんは変なんだよ」
いつの間にか、すっかり溶けてしまったアイスはもう食べることができなくて、テーブルの端に寄せる。せっかく綺麗に残したマーブル模様は、茶色く濁って元の姿など想像できなかった。
俺はバニラもチョコも、どっちも楽しみたかったのに。これじゃチョコの味しかしないじゃないか。
完全なる液体に変わったそれを眺めていると、拓海が生首マネキンの髪を梳かしながら口を開く。その隣には鹿賀が座っていて、2人仲良く1つの首を共有していた。
「また例のあれじゃない?言っても無理なら経験させようってやつ」
「例のあれって?」
「慧は人の話を聞かないからな。今回の鹿賀っちの話だって、こうして喧嘩までしなきゃ駄目だったわけだし」
その言い方がなんだか上から言われているみたいで言い返そうとした。けれど、それを遮る声が俺を庇う。
「今回のは僕が後回しにしただけです。本当なら、もっと早くに言うか、最後まで言わないでおくべきでした」
「ほらほら。高校生の鹿賀っちですら自分の悪いとこ認めるのにな。なんで大学生の慧くんはできないんだろうな」
小首を傾げる動作を、生首と一緒にしやがった拓海。乱れていた髪が綺麗に整えられ、それはテーブルの上で俺を向く。落ち着いて見ても気持ち悪い顔が、俺に向いている。
「さて、と。そろそろ寝るか!慧、お前明日は大学あんの?」
「ある…けど、休む。鞄も服もないし、行く気になんない」
「取りに帰れよ。それで仲直りすればいいのに」
そんな簡単にいくわけないだろう。俺の性格を知っているくせに無理を言う拓海を睨む。それは全く効果がなくて、にっこり笑った拓海は鹿賀の方を見た。
「そうだ、鹿賀っち明日って暇?」
「え……僕ですか?」
「俺、明日は課題出したら終わりでさ。その後買い物行くから一緒にどうよ?」
僅かに時間を止めた鹿賀は、拓海の言葉を理解して大きく頷いた。俺との時は何日もかかったくせに、どうして拓海にはこんなに簡単に懐くのだろう。
それは相手が拓海で、拓海の性格がそうさせているのかもしれない。でも不満だ。
「俺も買い物行く」
仲間外れにされてたまるか、と間に割って入る。けど拓海が俺に向けたのは、指で作ったバツ印だ。
「慧は駄目。俺が帰って来るまで鹿賀っちと留守番して、その後は自分の家に帰ること!帰ってリカちゃん先生に謝ること!!」
「なんで俺がっ」
「わかんない事は聞く、納得できなかったら話す。喧嘩の後はごめんなさい。それが無理ならリカちゃん先生も歩もいなくなる。慧はどっちを選ぶ?」
笑顔の裏に黒い部分を見せる拓海が笑う。俺は頷けない代わりに明後日の方向を向き、『答えない』という手段をとったのだった。
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