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ひどく悩んでいた割には聞き分けがよく、でもその言動は嘘ではないことがわかる。さっきまでの話が蜂屋の何に響いたのかは知らないが、それでも晴々とした顔に変わっていて、まあ悪くないかと思えた。
「言っておくけど、その特別が慧だとか言いやがったら潰すから」
「……!!そんなわけないやろ!いくら少女漫画が趣味でも、俺は絶対に男なんて好きにならへん!」
「とか言って手を出そうとしたくせに。今回のは見逃してやるけど、次はない」
「だからあれは!ウサマルが頭でっかちになってたからで!!追い込んだだけや」
飲み込もうとした唾が器官に入ったのか、苦しげに咳き込んだ蜂屋が涙目になる。
「俺がお前の話を聞くのも、お前が慧の友達だから仕方なくだ。慧がお前のことを見捨てたら、俺も同じようにする」
「あんた、どんだけウサマル中心なん?ほんま怖いわ」
「だって俺はあの子のために生きてるから。じゃなきゃ、こんな所でお前なんかの話を聞いたりしない」
「その潔さ尊敬する。誰もあんたからウサマル奪おうとせんて。それにウサマル本人も、他なんて見る気ないやろ」
片肘をつき呆れる蜂屋がカフェの入り口を指さす。そこには立ち止まってこちらを見つめる慧がいて、少しじゃなく、なかなかに機嫌が悪そうな顔をしていた。
「あれ、絶対に俺らが2人でおるの見て拗ねてんで」
「やっばぁ……慧君可愛すぎ」
「その反応はやっぱりアホやん。喜んでる場合ちゃうやろ」
ずかずかと歩いて来て、テーブルの傍に立った慧は更に眉を吊り上げる。それは蜂屋ではなく、どう見ても俺に向けてだ。
「俺に隠れて2人でなに話してんの?」
「何って……別に俺らは何も話してへんで」
「幸には聞いてない」
一蹴した慧に蜂屋が両手を上げ、その手で目元を覆った。指の隙間から覗く瞳は、俺に対する同情。
まるで可哀想なもの扱いに首を傾げた。
こんなにも可愛いのに。他のやつと話しているだけで不機嫌になって、でもそれをぶつける相手が俺しかいない。俺になら言っても大丈夫だと思ってくれることが、こんなにも嬉しいのに。
「慧君のことしか話してないよ。どれだけ慧君が可愛くて、俺がどれだけ慧君に夢中か語ってた」
「な、バカなのか?!そんなこと大学で言うな!」
「言わないでおこうと思ったんだけど、溢れちゃって。また言っちゃいそうだから早く帰ろう?」
席から立ち上がって慧の鞄を奪う。そこで、蜂屋がここに来た理由を思い出した。
「あ、プリント。慧君、また間違って蜂屋のプリント持って行ったらしいけど?」
「え?プリント?そんなの俺知らないけど」
きょとんとした顔の慧。その先に座る蜂屋は明後日の方に顔を背け、こちらを見ようとしない。
「ふうん……そういうこと、なるほど」
思ったよりも低い声が出て、蜂屋が肩を跳ねさせる。慧に少し待っているよう告げ、その隣に立てば口元を引き攣らせていた。
明らかに挙動不審な蜂屋が乾いた笑いと共に見上げてくるが、全く可愛いと思えない。
そして、引き攣った唇から紡がれた言葉は、とてもたどたどしい。
「な、んでしょう?なんか俺にまだ用事ある……って顔やんな。せやんな……ははっ、は」
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