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「まさか飲んだのか?」
予想外の状況に思わず訊ねると、慧は頬どころか耳まで真っ赤に染め上げた。じりじりと音がしそうなほど火照らせ、しどろもどろになって言葉を紡ぐ。
「べ、つに。初めてじゃないし……なんとなくだし。それに出すのも、なんとなく……変な気がした、から」
途切れがちに繋ぎ合わせた台詞は、気まずさから出たものだろう。ちらちらとこちらを窺う視線に、少しばかりの不安が混じっていてわかる。
目が合うとそらして、けれど確かめるかのように向きなおす瞳。数年も一緒にいれば、だいたい考えていることはわかるが、慧は時々、突拍子もないことを思い浮かべる。
「もしかして、嫌……だった?」
「え?」
「だからっ!!あんなの自分から飲むやつ、嫌だったのかって聞いてんだよ!」
飲めと命じて飲ませたことはあっても、慧が自分からそれをしたことは限りなく少ない。もう何度も肌を合わせた内で、片手で数えても余るぐらいだろう。
「どうせ俺のこと変態だって思ってんだろ。自分からあんなことして、その……言われなくても飲んだし」
膝立ちだった体勢を崩し、あぐらをかいた慧がハッと目を見開く。焦ったように勢いよく抱えた膝の理由は、全てが丸見えだと気づいたからで間違いない。
そんなことをしても今さら。もう既に見えてしまったものを、なかったことにはできない。
「変態だって言うなら、俺のものを舐めただけで勃起させる方が変態だと思うけど」
「それは……っ、してない!リカちゃんの勘違いだ!」
「勘違いはないかな。俺が慧君のものを見間違えると思う?」
「まっ、ちが…………えないと思う、けど」
日頃よりも低い声で唸った慧が、より強く膝を抱える。もう気づかれていると知ってはいても、見せたくないのか見られたくないのか……どちらでも可愛いとは思うが意味がない。
「俺が慧君のものを見間違うわけないんだって。隠しても無駄」
だから見せてと、固く閉ざした膝を割ろうと手をかけた。しかしそれは、思った以上に力が込められていて容易には開こうとしない。快感に弱く、口では嫌だと言っても身体は正直な慧にしては珍しい行動。
どうしたものかと首を傾げる俺の目の前で、愛らしい口が開く。
「だって。リカちゃんが俺の一部になりたいって言ったから……だから、飲んだら一部になるんじゃねぇのかって思って、それで」
「それで飲んでみた……と?」
「すげぇ苦くて不味いし、絶対に嫌だけど。他のやつなら嫌なことも、リカちゃんなら平気……というか。う、嬉しい」
羞恥に気をとられた慧の脚が開いていく。言葉を選ぶことに必死になって、意識がこちらまで及ばないのだろう。
ゆっくりと静かに開いた中心にあるのは、触れられてもいないのに起立する象徴。透明な蜜を垂らし、それを纏って震えるもの。
細い腰の真ん中で、それの先端からとぷりと新たな蜜が溢れる。
見られていることに気づかずに慧は気持ちを伝えてくれる。
「リカちゃんが我慢できなくなったり、弱ってたりすると嬉しい」
「なんだか物騒なこと言うね、慧君」
「物騒?わかんないけど、嬉し……って近い!顔が近いってば!」
大きく開いた股の間に身を乗り出して顔を近づける。真っ赤なままの頬を舐め、逃げようとした鼻先を食み、震える唇の寸前で止めた。
「リカちゃん、このままじゃ唇が当たる……んだけど」
慧が喋る度に吐息が触れる。吐息だけじゃなく、振動まで伝わってくるような、そんな感覚。
「うん。それで?」
「俺、さっきまでリカちゃんの舐めてたし。それに飲んだし」
「うん。で?」
「俺に聞かれても困る。その……嫌、じゃないのか?自分の味すんのって」
恐ろしくムードを壊す台詞。この距離、この雰囲気で言うべき言葉ではないだろうと笑いそうになった。もちろん堪えて見つめるのは、必死に考えて話すわりに、相変わらず間違った選択をしてしまう慧。
特別で唯一で、絶対の存在。
「いいよ、別に気にしない。だって、それはもう慧の一部になったんだから」
囁いてそっと口付ける。最初は戸惑っていた慧も次第に合わせて舌を動かせ始め、それは濃くて甘いものへと変化する。
俺の弱さが慧の一部になって、それを嬉しいと言ってもらえた。
どうしようもできない矛盾や、葛藤や、答えの見えない不安に頭を抱えて自制がきかなくなって。
そんな醜い感情など吐き出したくはないのに、吐き出すと慧は喜ぶ。嬉しいと言ってくれる。
「やっばぁ……もう、何て言うか……うん、何でもない」
なんだよと潜めた眉も、言えよと尖らせた唇も、封じるために再度キスをすれば縋る指も。
傍にいてくれるだけで泣きそうになるほど、ただ、愛おしい。
全てが愛おしくて苦しくて、狂おしくて。この気持ちを表した言葉は存在しないのだと思う。
だから伝えることが出来ない。けれど伝えたい。
『君が全て』『君の為に生きたい』
それを伝える為に深く口付け、強く抱きしめた。
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