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「しっかし、ほんまに目立つ人やな。髪も服も派手ちゃうのに、存在が派手なんか?」
そろそろ講義も終わろうかという頃。まとめの段階に入っている先生の話を無視し、幸が俺に話しかける。その話題の人はもちろんリカちゃんのことで、俺も幸に倣って窓の外を眺めた。
座ったベンチから移動しないリカちゃん。たまに伸びをしたり、首を回したりする仕草に、周囲の視線は自然と集まる。
「リカちゃんは昔からあんな感じだ。どこにいても、何をしていても目立つ」
「見た目だけなら下手な芸能人より良いもんな。やっぱりあれか?ウサマルも初めは見た目に惹かれたん?」
その質問の答えはイエスでもあり、ノーでもある。確かに整った顔をしてるとは思ったけれど、それだけで男のリカちゃんを好きになったりしない。
じゃあ何で好きになったんだろう。俺はいつ、どのタイミングで、何を理由にリカちゃんを好きになったのか考えてみる。
でも、答えは出なかった。
「わかんない。何が理由か覚えてない」
「なんやそれ」
幸が明らかに落胆した顔を浮かべるけど、わからないものはわからないから仕方ないと思う。そもそも、このタイミングでって決定的なものがあるなら、気づかずに終わる恋愛はこの世に存在しない。
ここが好きだと明言できなくて、けれど好きなことには変わりない。そんな感情もあっていいのではないか。
恋愛経験値の低い俺が言うのもなんだけど、それはそれで『アリ』だと思う。
「だって気づいたらずっと一緒にいて、何をする時も隣にリカちゃんがいて、困った時には絶対に助けてくれるから。リカちゃんは俺が呼んだら、どこにいたって駆けつけてくれる」
「それ怖すぎやろ。知らん間に盗聴器とかGPS付けられてんちゃうか?」
「さすがにないだろ。いくらリカちゃんでも、そこまで暇じゃねぇよ……あいつがどれだけ仕事してると思ってんだよ」
「気にするんがそこなん?普通は、そんなんされたらドン引きするやろ」
ヘラッと笑った幸が頬杖をつき外を見つめ、小さく口笛を吹く。軽く頷いたその顔は、嫌味なぐらい楽しそうだった。
「そういうこと。リカちゃんの用事ってアレか」
ぼそりと呟いた幸の一言に、荷物を片付けていた俺の手が止まる。
「アレ?」
「ほら見てみ」
指さす先にあるベンチ。さっきまで1人しか座っていなかったそこには、今は2つ目の人影。
リカちゃんとは対照的な金髪をしているくせに、同じように足を組んで偉そうなあいつの姿。
できるだけ近づきたくないと思わせる存在感は、高校の時から変わらない。
離れた場所からでもわかるぐらいに不機嫌で、離れた場所からでもわかるぐらい、リカちゃんに怒っていて。
それを軽く躱しているであろうリカちゃんは、苦笑していて。
今日もド派手な金髪をかき上げたのは、牛島歩だ。
誰も近づこうとしなかったリカちゃんの傍に、弟の歩が座っている。
──最悪だ。
性悪兄弟が揃いやがった。
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