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リカちゃんと幸のおかげで、終わりが見えてきた課題。
リカちゃんと幸の所為で、進めるしかなかった課題。
それを片付け、リカちゃんに呼ばれてダイニングテーブルへと着く。
俺の向かいにはリカちゃんが座り、俺の隣には幸が座るという想像もしなかった状況に、嬉しいような心配なような、複雑な感情が入り混じる。
用意された夕飯はいつもより少し豪華で、それは頑張った俺の為か、それとも手伝った幸の為かはわからない。でも、きっと両方な気がしてリカちゃんを軽く睨むと、苦笑いが返された。
「いやあ、ここまで来ると圧巻というか……期待を裏切らん人やな」
テーブルに並べられた料理の数々に幸が驚き、凝視する。そしてその目をリカちゃんに向けた。
「これ、全部1人で作ったん?」
確認をとる幸にリカちゃんは首を傾げた。
「作ってる過程を知ってるくせに、それ聞く必要はあるのか?」
「せやけど。うちのおかんより上手いと思うで」
箸を持ち、手を合わせた幸が手前の煮物を口に含むと、頬が緩んだ。その顔は嬉しそうで、きっと気に入ったんだと思う。
「美味い……やばいな、これ」
「それはどうも」
「はあ…………。ウサマル、ほんま感謝した方がええで。今時、家事は分担するもんなんやからな」
それは俺の料理が下手だと言っているのだろうか。それとも俺が課題をしている間に、料理だけじゃなく洗濯物をとりこんでいたリカちゃんを褒めているのだろうか。
「うるさい。余計なお世話だ」
幸の小言に言い返し、手前の煮物は奥に押しやってメインの生姜焼きに箸をつける。前から注がれる視線の意味は「野菜も食べろ」だろうが、そんなの無視だ。
だって、これは俺だけの為に作ったものじゃないし。
別に俺が豪華にしてくれって頼んだわけじゃないし。
だから無理して食べる必要ないし。
「慧君、また好き嫌いしてる」
注意するリカちゃんを無視して、嫌いなサラダと煮物を幸の方へ寄せる。するとリカちゃんはため息を零しただけで、何も言わなかった。
よく食べる幸と、あまり食べないリカちゃんと、好きなものしか食べない俺。凄いスピードで胃の中に収める幸を見ているだけで、こちらが満腹になりそうだ。
「幸……お前、よく食うよな」
「ほ?普段はコンビニ弁当か外食ばっかりやからな。誰かの手作りなんて久しぶりや」
「俺だってお好み焼き作ってやっただろ」
「あれは料理ちゃうかった。思い出すだけで胃が痛くなる」
幸の一言にリカちゃんが吹き出し、思いっきり睨めばあからさまに視線を彷徨わせる。
「……リカちゃん、笑ってんのバレてるからな」
「え?慧君の気のせいじゃないかな」
「どうせリカちゃんも、俺は何もできないやつだって思ってるんだろ」
「そんなことないって。慧君の料理は、ちょっと個性が爆発し過ぎてるだけだから。ほら、好き嫌いは人それぞれだし」
だから気にするなと言われ、頷くと隣の幸が頬杖をついて呆れ顔をする。既に食べ終えた皿やお椀を重ね、箸を置いた幸が。
「そうやって甘やかされ、可愛がられてすくすく育ってきたんやな。でもって、インプリンティングが完了したというわけか。さすが愛玩動物」
「なに?どういう意味?」
意味はよくわからないけど、多分褒め言葉じゃないんだろう。幸の顔は偉そうだし、向かいのリカちゃんは何とも言えない顔をしている。
「リカちゃん、さっき幸が言ったことどういう意味?」
俺が困った時に訊ねるのはリカちゃん。訊ねた先のそいつは、幸をチラリと見て、その目を俺に固定した。
「慧君が可愛すぎて、俺が甘やかしてるってことかな」
「イン……なんとかってやつは?」
「さあ?発音が悪すぎて聞き取れなかった」
リカちゃんが聞き取れないなんて、幸の言ったそれはよほど下手くそだったんだろう。
「幸、格好つけて横文字使ったけど残念だったな」
からかい半分、慰め半分の俺の台詞に幸が鼻で笑う。
「俺はウサマルを尊敬するわ」
「尊敬?幸が俺のことを素直に褒めるなんて、珍しすぎて怖いんだけど」
「俺にはその思考回路が怖い。ウサマルの頭ん中、どうなってるん?」
俺の頭の中がどうなっているのかって聞かれても、あるのは勉強して疲れたから甘い物が食べたいってことだけだ。ストックのお菓子は何が残っていたか、それを考えている。
聞かれたから答えたのに、告げた後の幸は心底どうでもいいって顔をしていて、じゃあ聞くなよって思った。
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