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at Last-4 ≪ side:Rika ≫
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「やっばぁ……慧君、職場も同じが良いって、どれだけ俺のことを好きなの?」
同じ家で朝を迎えて、同じ仕事場で働き、2人の家に帰る。朝も昼も夜も、眠っている時だって傍にいたいと思っているのは、どうやら自分だけではなかったらしい。
揶揄されても言い返してこない慧。それは言葉のない肯定と同じで、悔しそうに唸りはしても「違う」とは言わなかった。
ほら。またこうして心が温まる。
このままでは、いつか全身を流れる血が沸騰して、身体ごと溶かされてしまいそうだ。そうならない為にも、慧にはまだ『生意気な慧君』でいてもらわなきゃいけない。
そうでないと、俺は簡単に泣いてしまうだろうから。
嬉しくて嬉しくて、喜びで溢れる感情を止められない。言葉では言い足りない分が、涙となって零れてしまうだろう。そんな俺を見せるのは、まだ少し早くて。
もう少しだけ、可愛い慧君でいてほしいと思うのは、きっと俺の我儘だ。この本音だけは絶対に言えない。
からかわれたまま、沈黙を貫く慧を横目で盗み見る。その眉は寄り、悔しいと言うよりも悲しい表情をしていた。
まさかそこまで思い悩んでいたとは想定外で、少し驚いた。それと同時に、変わらない思い込みの激しさに感服してしまう。
「まったく……。それでこそ慧君と言うか、さすが慧君と言うべきか」
「リカちゃん。それ、どういう意味だよ」
「慧君は、まだまだ俺のことを知らないなあって、そういう意味」
たとえ君が兎丸慧のままでも、獅子原慧になったとしても。君の本質は変わらない。
意固地で融通がきかなくて、そのくせ押しには弱くて、一度決めたら人の意見は聞かない。どこまでも自分を貫き、自分の信じた道を走っていく。
そんな君を愛してしまったのだから、俺の返事は1つしかない。
「じゃあこうしよう。慧君が俺を待たせている間、毎日好きって言って。そうすれば俺は毎日幸せで、どれだけでも待てる。慧君の気が済むまで、いつまでだって待ってあげるよ」
告げた言葉に慧の頬は赤くなり、眉が鋭く吊り上がり、やっぱり顔を背けてしまう。こっちは真剣に話してるのに、だなんて不貞腐れてしまった慧の耳元に唇を寄せ、顔が見えないよう打ち明ける。
こんな情けないことを言ってしまう俺を嫌わないで、と願いを込めながら。
「俺がお爺ちゃんになって、慧君の声が聞こえなくなっても名前を呼んで。目が見えなくなったら、ここにいるって手を握って。声がかすれて聞き取れなくても、ちゃんと返事をして。最期の瞬間まで、慧君の傍にいさせてね」
隣に慧がいるだけで。それだけで、笑って眠れると思う。そう告げると、小さな声で「そんなの当然だ」と返ってくる。
──ああ、今日も俺の慧君は最高に可愛くて男らしい。
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