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幸せってなんだろう。
いつも見守ってくれる家族がいて、何でも言い合える友達がいて、時に喧嘩する恋人がいて。
仕事、学校、部活にバイト。みんな重点を置く場所は違うけれど、人は1人では生きられない。
誰もが必ず幸せの種を持って生まれ、いつかそれは芽を出す。人よりも少し早い人、かなり遅れてからの人。大きな花を1輪だけ咲かせる人に、小さな小さな花をたくさん咲かせる人。
それぞれのタイミングでそれぞれの花を。けれど必ず、幸せの花は咲く時を待っている。
──それでも現実は良いことばかりじゃない。
花が咲く前に死んでしまう人もいるだろう。周りと比べてしまって、足元に咲いた自分の花に気づかない人もいるだろう。
そして花は花だ。どれだけ頑張って咲かせても、花は花なんだ。
いつの日か枯れる時はやってくる。今ある幸せが永遠に続くなんて、作られた物語の中の、都合の良い結末でしかあり得ない。それはとても、悲しいけれど。
例えばこの世界に生まれた時。歩や拓海と知り合った時。2人と同じ高校に上がれた時に、同じクラスになれた時。
そして、リカちゃんと出会った時。
2人の気持ちが通じた日。自分の駄目なところを受け入れてもらえた日に、リカちゃんの過去を知れた日。一緒に住むことを決めた日。
目が合って笑ってくれた朝に、隣合って眠る夜。
俺の人生ではたくさんの幸せの花が咲き、それは今でも俺の頭の中で揺れている。
時々、不意に弱ってしまうことはあるけれど、リカちゃんが大事に育ててくれているから、俺の幸せの花は今日も元気だ。
そう。元気……なはず、だったのに。
育ててくれる人がいなくなれば、すぐに枯れてしまう弱い花。
俺のそれも他のやつらの花と同じように、放っておけばそのうち枯れてしまうのだろう。
ふわっと緩んだあの笑顔がなきゃ。
慧君って呼んでくれるあの声が聞こえなきゃ。
何も見えない、何も聞こえない暗闇で花は育たない。
この気持ちを伝える為の方法を、俺は知らない。
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