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「…うす」
門をくぐったところで後ろから歩がやって来た。
まだ寝ぼけてるっぽくボケっとしてるだけだが、周りからみたらガン付けてるように見えるんだろう。
歩の周り1メートルに人が近づかない。
「お前やべぇ顔してんぞ」
そう指摘すれば、歩は俺を思い切り睨みつけてくる。
「……誰のせいだと思ってんだよ」
「え、なに?」
元から低い声が、さらに低くて聞き取れない。
何度も欠伸をかみ殺す様子からかなり眠たいらしいのに、なんでわざわざ来たんだろうか。
コイツが寝坊で遅刻するなんてしょっちゅうなのに。
「バイト忙しいのか?」
「まぁな。それなのに朝から叩き起こされてマジ迷惑してんだよ」
「……誰に?」
歩のとこはシングルマザーで、母親は看護師だ。割がいいからとほとんど夜勤だって聞いたことがある。
だから朝は家にいないか、いたとしても昼過ぎまで眠っているらしい。
「まぁ、ちょっとな」
「もしかして彼女できた?」
歩の浮ついた話ってあんまり聞かない。寡黙で無愛想だからモテるのかモテないのかいまいちわかんねぇ。
「違ぇけど……まぁ元気になったんなら良かったんじゃねぇの」
軽く頭を叩かれる。それが不器用な歩らしい。
「……サンキュ」
礼を言えば目を細めて軽く笑う歩。
なんだか、その表情はどこかで見たことあるような気がする。
つっても中学から一緒だから見たことあるんだけど、なんか違う。
小さな違和感を抱きつつ、俺たちは教室へ急いだ。
*
教卓の前にリカちゃんが立つ。家ではウサギと呼ぶのに学校では兎丸と呼ぶ。
脅されて一緒に寝て、お仕置きだとキスされて……飯を一緒に食って、俺たちの関係ってなんだろう。
教師と生徒と言うには近く、けれど恋人ってわけじゃない。
「恋人ってアホか俺」
「ん?慧なんか言ったー?」
後ろの席から拓海が声をかけてくるが、俺は振り返らず適当に答える。
「何もねぇよ。なぁ、教師と生徒が付き合うってどう思う?」
「教師と生徒ぉ?なにそれAVの設定?
慧がAVとか意外すぎんだけど。見たいなら教師モン貸そうか?」
「…………絶対にいらない」
拓海に聞いた俺がバカだった。でもってAVとか言われてちょっとヘコむ。
やっぱり教師との恋愛なんてアブノーマルだよな。不毛の恋ってやつ?
それなら、どうしてリカちゃんは俺にキスしたんだろう。
「あ、でもさー。なんかリカちゃん先生と慧ならアリかもな!」
拓海の何気ない一言に俺はバッと振り向いてしまった。
驚いた拓海と目が合う。
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