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「昨日の誕生日もさ、アイツ必死で聞き込んできたぜ?
今時の高校生はどこ行きたいやら何食べたいやら」
「…なんて答えた?」
「中華食べたい気分だったから、横浜で中華。んで海見て帰るって答えた」
……リカちゃん。
素直すぎるだろ…。
「なにがあったか知らねぇけどさ、兄貴は中途半端に手出したりするヤツじゃないよ」
「別に…手なんて出されて……」
「あ?首にキスマークと歯型ガッツリ付けて帰ってきて何言ってんだよ」
見られてた!!!やっぱり歩にはバレてた!!
「いやぁ。あのスカした兄貴も好きなヤツには独占欲丸出しだなって笑えたわ。
慧も慧で兄貴見る目が潤んでるわウットリしてるわで…バカップル爆ぜろって思ってた」
マジ恥ずかしい。
バレないように必死だったから更に恥ずかしい。
「多分さ、兄貴の事だから何か理由があんだと思う。
慧がもう嫌で顔も見たくないなら別だけど…ちょっと待ってやってほしい」
急にトーンが落ちた歩の声が聞こえ、そちらを向く。
真面目な顔をした歩と目があった。
「アイツ、ああ見えて一途で健気だから。好きなヤツは溺愛するタイプだと思うぞ」
フッと笑った歩。
それがリカちゃんと重なって見えて、また泣きそうになった。
*
冬だから寒いのか。
それとも1人だから寒いのか。
空いた左側には今日も誰もいない。
頭がボーッとする。
やっぱり昨夜もリカちゃんは来なかった。夜遅くに隣の部屋から物音が聞こえたから帰りが遅かったのかもしれない。だから来なかったのかもしれない。
けれどそれは俺の願望であって、現実はこんなもんだ。
歩はもう少し待ってくれと言ったけど……もう少しってどれぐらい?待ってて何か意味があるんだろうか?
わからない。俺には何もわからないんだ。
リカちゃんが何を考えているのかわからなくて、2人で過ごした数日が夢のように感じる。
窓からの景色が全て灰色に見える。
あの日失った色はまだ戻ってこない。
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