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「ねー。兎丸君。俺の言ったこと、もう忘れちゃった?」
後ろから間延びした声が聞こえる。
それを無視して俺は歩いた。
もちろん家に帰る道なんかじゃない。
ただ闇雲に歩いて、こいつが諦めるのを待つんだ。
「ねぇ慧」
「気安く呼んでんじゃねぇよ!!お前の声聞くだけで虫酸が走るんだよ!」
クスクス笑うのが腹立つ。
憎くて憎くて今すぐにでも消えてほしいぐらいに嫌い。
「えー。鳥と牛は良くて俺はダメなの?」
「…お前にだけは呼ばれたくない」
「ふぅん。あ、そっか。
んじゃ“ウサギ”って呼んであげようか?」
「なッ!!!て、てめぇ……!!!」
どこかでリカちゃんが俺を呼んでるのを盗み聞きしたんだろう。
確信犯で俺の神経を逆撫でしてきやがる。
人をからかうのが好きだとしても、こいつのやり方は気に入らない。
やり方だけじゃなく、俺はこいつの存在自体が気に入らないんだ。
「ねぇ。なんでウサギは俺との約束守らないの?」
「……」
「ハァ…強情だなぁ。んじゃ兎丸はなんで約束も守れないの?」
段々と刺々しくなっていく鷹野の口調に気付きながらも、俺は無視を続けた。
「……バラされてもいいの?」
それは一瞬にして崩れ落ちる。
「…約束、なんてしてない」
「したじゃん。もうあの人に近づかないって」
「近付いてなんかない」
「……いかにもヤってきましたって顔して何言ってんの。首のキスマーク増えてるもん」
鷹野の手が俺の首に触れる。
ビクッと震える俺を高笑いしながら、首に回した手に力を込めてゆく。
「った、たか…………苦しっ!」
「本当にイライラするなぁ」
鷹野の目に俺は映っていない。ううん。俺だけじゃなく何も映っていない。
「鷹野っ、苦しい……っ!!」
パッと離された手に、俺は膝から崩れ落ちた。
地面に這い蹲り肩で息をする俺の前髪を鷹野が鷲掴む。
「明後日から俺の家、誰もいないんだ。来てよ」
「…………なん、で」
「お前を抱かせろって言ってんだよ」
喉の奥の奥に息が詰まる。
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