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『おはよう』『行ってきます』『ただいま』『おやすみ』
たった1週間で当たり前になったアイツとの時間が、何気ない会話が恋しくて、無意識に空けてしまう隣に何度自嘲しただろうか。
その度に酒を煽りタバコに火を点け自分をごまかした。
そうでもしないと止められなかった。
少しでも気を抜けば俺はアイツの元へ行ってしまう。
自分で自分の首を絞めていることなどわかっていた。
いつか終わりが来るとわかっていてもアイツが、慧が欲しかった。
俺だけのモノにしたかったんだ。
「あんたは何がしたかったの?」
桃の鋭い声が容赦なく突き刺さる。
「あれだけ甘やかして特別扱いして……何も知らない子に手まで出して。
ウサギちゃんが好きになるのは当然でしょ。それを生徒にしか見れない?
笑わせんなよ。そんなあからさまな嘘で納得すると思ってんのか?」
素の桃が荒々しく言い捨てた。
「……そうだな。何がしたいんだろうな、俺」
投げやりな俺に桃は怒りを露わに問い詰める。
「俺には資格が無いって何?」
「無いだろ。お前、俺が何をしたのか忘れたのか?」
桃の顔が一瞬翳る。
その話は俺たちにとってタブー。触れてはいけない暗黙の了解がそこにはある。
「それならどうして近づいた?
ウサギちゃんの気持ちに気づいてて、どうしてやめなかった?」
どうして?
そんなの……
「嬉しかったから。自分の好きな子が自分を好きになってくれた。
それを嬉しいと思わないヤツがいるか?」
答えは簡単だ。
「好きだって言われた時、どんなに俺が嬉しかったかお前にはわかんないだろうな」
桃はわかってない。
それがどれほど残酷で、俺がそれをどんなに望んでいるのか。
「教師だとか生徒だとか、そんなのどうだっていい。
嘘でも何でもいい。慧を突き放す理由が欲しかった」
弟想いの兄、兄想いの弟。
それを壊したのは…紛れもなく自分。
母親を失い、父親には相手にしてもらえず…唯一の心の拠り所であった兄を奪った罪は重い。
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