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あれは久しぶりに大雨が降った日だった。
いつものように4人でくだらない話をして、バカみたいに笑っていた。
「獅子原!!」
血相を変えた担任の顔は今でも覚えている。
呼ばれて職員室へ行けば、母親が緊急搬送されたと聞かされた。
仕事人間の父親とは連絡が付かず、病院で付き添っているのは幼い弟1人だけ。
俺は急いで病院へ行こうとした。
大雨の中、星一に付き添ってもらいタクシーに乗り込む。
キツく掌を握りしめる俺を大丈夫だと何度も声をかけ、落ち着かせてくれた親友。
隣に星一がいてくれて良かったと心から思ったんだ。
タクシーを降りて走り出す俺の名前を叫ぶ星一の声。
あの時の事は今でも鮮明に…まるで今この場で起きているかのように目に焼き付いている。
いや…焼き付いている……なんて可愛いもんじゃない。
忘れたくても忘れられない。
目を瞑ればすぐに俺はその場に舞い戻ってしまう。
振り返るよりも早く感じる衝撃に、思わず倒れこみ…数秒後、後ろを見る。
そこにあったのは赤く染まる親友の姿。
雨で視界が悪くなっていた車が俺にぶつかる刹那、星一が俺を突き飛ばした。
俺が轢かれるはずだった場所に横たわっている星一と目が合って……アイツは小さく笑った。
勉強ができて、人望があって、お節介で。
それでいて変なところは頑固だった。
優等生のくせに屋上でタバコを吸い、ヘラヘラ笑いながら空を見上げていた。
星一がいれば自然とそこに笑顔が溢れる。
そんな星一に俺は密かに憧れていたんだ。
周りと馴染めず、退屈な毎日から抜け出せたのは星一がいてくれたから。
誰よりも真っ直ぐで、誰よりも強い。
辞書で正義とひけば、それは星一の事だと思った。
自慢の親友を身代わりに生き残った自分が許せなかった。
残された俺のすべき事は彼の代わりに生きる事。
彼が守りたかったものは何にも代えて守る。
彼の見たかった景色を見て、したかった事をして、会いたかった人に会う。
その全てを叶える為に生きようと決めた。
――あの瞬間から俺の時間は止まった。
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