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「なぁ慧。あんまりリカちゃん先生と喧嘩すんなよ」
口を尖らせた拓海が言う。
「拓海、お前マジどうしたんだよ」
「別になんでもねぇよ。なんか俺、2人が笑ってるの見てるとポカポカするんだ」
じゃあまたな!と手を振り帰っていった拓海。
小さな拓海の中にも、たくさんの思いと願いが詰まっていて、それは複雑に絡まりあってるのかもしれない。
なんとなく……今は何も聞かないでおこうと思った。
「ウサギ?」
「おかえりリカちゃん」
1秒でも早く会いたくてリカちゃんの部屋で待っていた俺を、帰ってきたリカちゃんが首を傾げて見る。
「え、なに?」
ギュッと抱きついてその胸に顔を埋めた。
夏の匂い、リカちゃんの匂い…すごく安心する。
「もしかして慧君ってば甘えたいお年頃?」
俺の髪に触れる指先は、ほんのり温かい。
「リカちゃんはさぁ……運命って信じる?」
顔を埋めたままの俺を、抱きしめ返したリカちゃんがクスクス笑う。
「運命ねぇ……出会いはみんな運命的なんじゃねぇの。
その後をどうするかは自分次第だけどな」
「例えば?」
「俺なら運命も偶然も全部思い通りにしてやる。
自分の道は自分で決めるもんだろ?
神様にだって従いたくねぇな」
相変わらずの俺様っぷり。
神様にすら勝つつもりらしいリカちゃん。
それならば……この先どんな運命的な出会いをしても、どんな偶然の悪戯が積み重なったとしても。
ずっと離さないでいてほしい。
「仕方ないから思い切り甘やかしてやるよ」
背中に回した手に力を込める俺の頭を、軽く撫でてくれる大きな手。
「………好き、なとこかぁ」
「何が?」
「俺のどこが好きなの?」
見上げたリカちゃんは迷うことなく答える。
「存在。全部じゃなくてお前の存在そのものが愛しい」
この人の愛情はとても重たくて深くて、俺じゃ太刀打ちできそうにない。
形のないものに不安になってもリカちゃんが教えてくれる。
もしかしたらリカちゃんには心の声が聞こえるのかもしれない。
そう思えるほど、完璧すぎる恋人だ。
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