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自分で作った弁当を広げる拓海、コンビニで買ったパンを食べる俺。
そして。
「お前なぁ…野菜も食えよ」
「やだ。ブロッコリー嫌い」
「ちゃんと青臭いの消えるようにしてやってるから」
「無理。見た目からして俺とは合わない」
「どんな理由だよ…ったく。それならトマト食っとけ」
明らかに兄貴が作ったであろう弁当を広げ仲良く食べだす2人。
ここが学校で、しかも俺たちの前だってわかってるんだろうか…。
「リカちゃん先生の弁当すげぇ…」
拓海が2人の弁当を見てそう言うのも仕方ない。
彩のいい弁当をまさかこの俺様教師が作ったとは普通は思わないだろう。
「今日はたまたまな。誰かさんが朝早くに起こすから」
「俺のせいにすんな」
「誰かさんが自分だって自覚はあるんだ?」
本人同士はそのつもりなど無いだろうけれど、どう見てもイチャイチャしてるとしか思えない。
っつーか距離近ぇんだよ……。
さっきから甲斐甲斐しく慧の分を取り分けている兄貴の溺愛ぶりは凄い。
これで俺ばっかり好きだなんて慧が思う理由がわからない。
俺からしたら羨ましい。
そして今は妬ましい。
目の前に座る自分と少し似ている顔を睨む。
「なに?」
「………ウザい」
「今日もご機嫌ナナメかよ。人がせっかくお膳立てしてやったのに」
そのスカした顔が余計に腹立って、入っていたおしぼりを投げつければ見事にキャッチされ悔しいことにそれで慧の口を拭いていた。
「まぁまぁ。優しいお兄様が情けねぇ弟にもう一度チャンスやるよ」
クスクス笑うその顔。
本当に優しいお兄様なら絶対にこんな風に言わないと思う…が、もう手の無い俺は黙って続きを待つ。
「今週末にウチで桃の昇進祝いしてやることにした」
「昇進?」
「ああ見えてあのオカマ仕事は出来るからな」
…また。また俺から遠くなる。
けれど今はそんなことに構ってられない。
「で、来んの?」
「……行く」
バイトは昼までだから夕方には行ける。
俺が現れたことで桃さんがどんな反応をするかわらないけれど…このチャンスを逃す手はない。
「あいつなら花でもやれば喜ぶだろ」
「花……」
紫陽花を見て喜んだ桃さんを思い出した。
「歩。いいこと教えてやるよ」
慧の髪を弄りながら兄貴が俺に視線だけを向ける。
「あの日、あいつ連れて行く時に言ってたんだけど」
それは俺にとって思いもよらない言葉だった。
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