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「…なんだよ」
約束の時間より少し早く来た歩。
ソファーに座ってタバコを吸う…のはいいんだけど、どうしても気になるのはその口元だ。
「見てんじゃねぇよ」
元々口は悪いし偉そうな男だけれど今日はより酷い。
けれど俺は知っている。
ここには、そんな歩よりも偉そうで面倒くさい男がいることを。
「おい。てめぇ誰のもんに偉そうにしてんだよ」
「ー痛ッ!!!」
そっと背後から忍び寄ったリカちゃんが、歩の口元に貼られていた絆創膏を無理矢理に剥がした。
「へぇ…これは思いっきり噛まれてんな」
「うっせぇ」
「歩くんまたやっちゃったかぁ…」
俺1人だけ話に入っていけない。
そしてこの2人は絶対に教えてくれない。
なぜならこの2人は、ドSの俺様とその見習いみたいなもんだから。
「んで?こんな早く来た理由は?」
俺の隣に座ったリカちゃんがグラスに入った水をくれる。そういや風呂上がり何も飲んでなかったなぁ…と思い素直に受け取った。
「大方、先に来て花だけ置いて行こうとしてんだろ」
ダイニングテーブルに置かれているのは真っ白な花に赤の映える花束。
これを、この歩が…って考えると少し寒い。
「……マーガレットにバラ、しかも12本…ねぇ」
「お前っ、そんな事まで知ってんのかよ?!」
「花束は男の常識だろ」
「あの人には絶対に言うなよ!!」
「ふはっ……どうしようかなぁ…」
リカちゃんが動いて俺の背後に回る。
後ろから抱きしめるように俺の身体を包んで肩に顎を乗せた。
「は?え、ちょっ…いきなり何?」
その行動に驚いて後ろを振り返ろう…とするが、リカちゃんの顔が邪魔になって出来ない。俺は諦めて手に持ったグラスからチビチビと水を飲むことにした。
おとなしくなった俺の頭を一撫でしたリカちゃんが楽しそうに歩に話しかける。
「とりあえず俺の大事な奥さんにガン付けたこと謝ってくんない?」
鋭さ全開だった歩の目が一瞬にして白ける。
そして俺を見て、花束を見てまた俺に戻る。
「……最悪」
「どうとでも。喧嘩売る相手ぐらい考えろよ」
「弟の前でイチャついてんじゃねぇよ」
「イチャついてんじゃなくて普段通り可愛がってるだけ」
なんだこの会話。
肩にあったリカちゃんの顔が頬に移動し、擦り合わすようにして笑う。
「誰彼構わず噛み付いてんじゃねぇよクソガキ。
お前の件とウサギは関係ねぇだろ」
言ってることは無茶苦茶なのにリカちゃんの声は落ち着いていて静かだ。
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