アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
410
-
力一杯にしがみつくあたし。
抱きつくあたしの身体を、歩ちゃんがさっき振り払った手で撫でてくれる。
「…歩ちゃん。」
「もう黙って。」
近づいてくる唇。
冷たくて柔らかくて滑らかな歩ちゃんの唇。
恋人になって初めてのキスに胸は高鳴る。
目を瞑ってその瞬間を待ちわびた。
…………あれ?
それは一向に触れることはなく、自分から突き出してみても何もない。
「あら?」
瞑った目を開けた先には。
「キス顔すっげぇ可愛い。」
ニヤニヤとあたしを見下ろすのは愛しのダーリン。
「もしかして期待させちゃいました?あんまり好き好き煩いと誰か来るかなって思っただけなんですけど。」
そこで知る。
見事、この小生意気な高校生にからかわれたことを。
出て行こうとしたのではなく外の様子を見る為だったのだ。
「さっ…最低!!!」
「はぁ?勝手に勘違いして好き好き言い出したのはそっちだろ。
しかも触りたいばっかり言って……この変態。」
「酷い!!!」
「どっちがだよ。無駄な意地張って可愛くねぇこと言うから思い知らせてやっただけ。」
この年上に対してもブレない偉そうな性格。
「なっ!!!悔しいっ!歩ちゃんなんか…っ!!!」
「なんか?」
悔しい悔しい悔しい。
悔しくて仕方ない……それなのに
「好き。」
素直に出た言葉に歩ちゃんが笑う。
「俺も。」
今度こそ重なる2つの唇。
軽く合わさるだけなのに心まで溶けてしまいそう。
一瞬離して微笑んでくれる表情は優しい。
「ね?可愛がってあげるって言ったでしょ。
それに嘘はつかないとも言った。」
有言実行…まさにそれだ。
あの日あたしを落とすと言った歩ちゃん。
本当に全て思い通りに成し遂げてしまった。
「このいじめっ子!!!リカと全く同じじゃない!」
「同じじゃねぇよ。
あいつは苛められて堪えてるのを見て興奮する変態。
俺は苛められんのを期待して、尻尾振ってんのを見るのが好きなの。変態と一緒にすんなよ。」
……どっちもどっちだ。
寧ろ性格の悪さでは勝っている気もする。
けれど1つ言えることがある。
「あたしじゃ勝てそうにないわ……。」
小さな完敗宣言は届かない。
けれど彼には…ううん、彼にもきっと見えていたのだろう。
あの男と同じ遺伝子。
意地悪で偉そうなところも、自信家でキザで、でも本当は優しくて愛情深い。
澄んだ黒の双眸が柔らぎ近づいてくる。
「……いっぱい、可愛がってね。」
「もちろん。
俺、自分のモノは大事にしますよ。」
どんどん変わっていく彼を今度は自分が見守る。
あの時のような結果にはさせない。
「よそ見なんかしたら許さないですからね。」
真っ直ぐな彼となら、ちゃんと向き合って築いていける。
この恋は、2人の最後の恋になるに違いない。
今度こそ確かな絆を気付いていこう。
そう、心に決めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
410 / 1234