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「なんでそんなに機嫌悪いんだよ」
歩を睨む俺にリカちゃんが聞いてくる。
なんでって……あれ、なんでだろう。
「わかんねぇけど、なんか腹立って」
そうだ。
意味わかんねぇ事で歩にネチネチ言われたから。
なんか責められてる気がしたからだ。
「ふぅん。まぁいいけど。
それよりいつ実家帰るか決めたか?」
避けたかった話題を出されて身体がビクッと反応した。
リカちゃんの視線が少し鋭くなる。
「そのうちな」
「そのうちじゃねぇよ。送ってやるから決めとけ」
決めとけって言われても、本当はバックレてやろうと思ってたから何も考えて無かった…なんて言えない。
「いつまでも後回しにすんな」
「わかってるよ、うっせぇな…」
「お前はまだ未成年なんだからな。なんでも1人で出来ると思ったら大間違いだから」
そんなのわかってる。
この家だって学校だって、今の生活だって。
全部与えられたものだってわかってる。
「ちゃんと側にいるから。
何があっても見放したりしねぇから安心しろよ」
毎月与えられる生活費。
それとは真逆に一切来ることのない連絡。
会うのは年に数回だけで、入学式ですら顔を出さない父さん。
俺なんか別にどうだっていいのに。
俺が大学へ行こうが就職しようが、部屋に引きこもってニートになろうが好きにしろって言われるだけなのに。
「………お盆には帰る」
仕方なくそう言えばリカちゃんが満足そうに答える。
「わかった」
「リカちゃんの用事はいつ?」
「俺も合わせて盆にする。だからそれ以外はお前に付き合ってやるよ」
大嫌いなやつに会う大事な用事…ってなんだろう。
きっと聞いても教えてくれない。
そのくせ今も少しだけ嫌そうな顔をしている。
「リカちゃん苛められたりすんの?」
「俺が?まさか。
まぁ……もし苛められたら慧君が慰めてくれる?」
人がせっかく心配してやったのに返事は小バカにした言葉。キッと睨んでも笑うだけで全く効果が無い。
「もう知らねぇ。お前なんか苛められて、いっぱい泣かされればいい」
「慧君は俺にだけ特別冷たいよなぁ……」
「これが俺の普通だっつーの」
顔をそらしてリカちゃんの方を見ないようにすれば、そっと握られる手。
「みんないるんだから離せよ」
「今から補給しとこうかなって。
なんでガソリンスタンドみたいに慧君スタンドって無いんだろうな。そしたら俺、毎日通うのに」
そう言って握った手に力が込められる。
なんなんだ?本当にワケわかんねぇ。
「…………行きたくねぇなぁ」
それは俺じゃなくてリカちゃんの呟き。
聞こえるか聞こえないの大きさの声で零れたそれに何か答えようと口を開く。
気づいたリカちゃんが微笑んだ。
「次は何を巻いてほしい?」
「え……っと、」
「時間切れ。俺のオススメに決定なー」
リカちゃんは何事も無かったかのように手を動かす。
もういつも通りのスカした顔に戻っていた。
俺は、聞くなという無言の圧力に黙っているしかなかった。
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