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俺の前でせっせと部屋を移動しては荷造りをするリカちゃん。
用事だと言っていたのは、どうやら田舎に帰るってことだったらしい。
紛らわしいこと言ってんじゃねぇよ…と思いながらリカちゃんが準備してんのを見る。
「なぁ、なんでスーツケースいんの?」
リカちゃんが取り出してきたのは3泊ぐらい余裕でできそうな大きさのスーツケース。
その色はやっぱり黒だ。
「ちょっと荷物多くて」
「珍しい。リカちゃんいつも手ぶらなのに」
リカちゃんは出かける時はほとんど何も持たない。
持つのはスマホと財布と煙草ぐらいだ。
「さすがに遠いからなぁ…スーツも何着かいるし」
「遠いって、実家どこ?」
実家…歩が前に言ってた気もするけど覚えてねぇ。
リカちゃんから直接聞いたことはないはずだ。
「父さんの実家だから関西の方。
お土産買って来てやるけど何がいい?」
「いや、ちゃっと待て」
お土産とかよりもっと大事な話がある。
関西に帰る………だと?
「リカちゃん……いつ戻ってくんの?」
そうこれだ。
ちょっと用事がある、だなんて聞かされてたからすぐ帰ってくるんだと思ってたのに。
確認しなかった俺も悪いけど言わなかったリカちゃんも悪いだろ。
「とりあえず5日はあっちにいるかな」
「5日も?!」
「とりあえずはな。もし延びるようなら連絡する」
嘘だろ?そんなの聞いてない。
しかもそれを何て事ないように言うんだから……イライラする。
リカちゃんにとって5日ぐらい会わなくても平気なんだ。
俺だけがショック受けてるんだ。
すっげぇ悔しい。
でもって寂しい。
「そんなすぐに帰ってこなくてもいいのに」
だから悔し紛れに口から思ってもない言葉が出る。
「煩いのがいなくなってせいせいする」
ダメだって、こんな事言っちゃ怒らせるって…わかってんのに止まれない。
「もういっそ向こうに住めばいいんじゃね?」
言い捨てた言葉は静かな部屋に響き渡る。
俺を見たリカちゃんは目を眇め、ため息を吐いて立ち上がった。
「わかった。ちょっと疲れたから寝る」
スーツケースをたたみ、寝室へ消えていく背中。
怒るでも言い返すでもない反応。
やってしまった………。
そう思った時には遅く、そのドアが閉ざされた。
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