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つい言い過ぎてしまったと寝室に行ってみればリカちゃんは寝ていた。
声をかけても呼んでも触っても起きない。
試しに頬っぺにキスしてみても反応はなく、本当に眠ってしまっているらしい。
仕事も忙しいみたいだし、それに加えて家のことはリカちゃんに任せっきり。
疲れてる時にあんなことを言ってしまった過去の自分を責めた。
もう言ってしまったことは消せない。けれど誤解だけは解いておきたい。
このまま雰囲気が悪い状態で離れるのは嫌だった。
そう思って無い知恵を振り絞って考え付いたのは…
「えっと…じゃがいもは皮を剥いて一口大に切る。
人参はヘタを落とす…ってヘタってどこまでがヘタで、どこからが本体なんだよ」
リカちゃんの為に晩飯を作ろうと思った。
初心者でも絶対に出来るであろう…っつーか出来なきゃヤバいだろうカレーを。
起きた時にこれが出来上がってたらリカちゃんも少しは楽なはずだろう。
「剥いて切って炒めて煮るんだろ?ハッ…こんなの余裕じゃん」
そう思ったのに。
野菜の大きさはバラバラだわ指は切るわ…。
どこまで剥いていいのかわからなかった人参は異様に小さい。
自分の料理の才能の無さに涙が出そうだ。
リカちゃんがよく使ってる鍋を取り出し、油を注ぐ。大さじとか測ってらんねぇから適当に。
そこに肉を塊のままぶっ込んでグルグル回して野菜を一気に入れた。
「あっつ!!!!!」
バチバチと油が跳ね、辺りに飛ぶ。それが腕にかかり、その痛みに思わず側に置いていたボウルを落としてしまった。
ガシャンと金属音を響かせフローリングを転がっていく。
それを拾おうと追いかければ誰かの足が見えた。
誰かって…もちろん俺以外に家にいるのは他に1人だけだ。
こんな猿の靴下だなんてふざけたの履くヤツなんてアイツ以外にいない。
「何暴れてんの?」
銀のボウルを拾い上げ、口を開く。
蘇るさっきの嫌な雰囲気。
「見てわかんだろ。料理してんだよ」
「料理?どう見ても暴れてるとしか思えねぇんだけど」
キッチンには失敗した野菜が転がり、散乱したボウルはシンクに溢れている。
これじゃあ苦戦しまくったのが一目でバレてしまうだろう。
「しょうがねぇだろ。今まで料理なんてしたことないんだから」
「それにしてもだなぁ…」
出来るヤツにはわからないだろうけれど、俺なりに精一杯頑張ったんだから。
わかってほしくて黙ったままリカちゃんの服の裾を掴む。
顔は上げられないからその胸にもたれるようにして…そうすれば少しだけ素直になれた。
「…さっきの、全部嘘だから。
ちゃんと待ってるから帰って来いよ」
本当は行ってほしくない。たった5日ぐらい…なんて俺には思えない。行くなら行くで前もって教えてほしかった。
言わなくてもきっとリカちゃんには伝わってるだろう。
だからああやって言い返さずに距離を取ったんだって今ならわかる。
だってリカちゃんは、どんな時でも冷静だから。
グリグリと頭を擦りつければリカちゃんの匂いがより強くなる。
それを堪能するようにギュッと強く抱きついた。
「あー……どうしようか」
頭上から聞こえる低い声。
やっぱり許してもらえないのかと、もっとキツく抱きつく。
「どうしようじゃなくて、そうするしかないよな」
その言葉に不安になって思わず顔を上げれば、ぶつかるのは蕩けそうなほど甘くて…それでいて恐ろしいほどに綺麗すぎる顔でニヤつく男。
あ…これは……嫌な状況かも。
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