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「会いたい」
たった一言。それを口に出してしまえば後は驚くほど簡単に零れてしまう。
子供だと言われても。
少しぐらい我慢しろと思われても。
それでもいいから言葉にしてしまいたくなる。
俺が思っている半分でもいい。リカちゃんにも、そう思っていてほしい。
「長い…5日は長ぇよ」
自分の子供っぽさが嫌でリカちゃんに突っかかるくせに甘えてしまう。
それをリカちゃんは全部受け止めてくれるって知っていて言う俺は卑怯だ。
「リカちゃん」
『今ちょっと外に出れるか?ベランダでいいから』
言われて外に出れば生暖かい空気を感じて眉を顰めた。
さっきまで冷房で冷えていた身体が温かさを取り戻していく。
「出たけど…」
『じゃあ空見て。何が見える?』
見上げた空は暗く何も見えない。雲1つない闇だった。
「何も見えねぇよ」
『1つだけ明るい星ない?
他のやつに比べて断トツ明るい星』
ぐるりと空を見渡し、探すけれど見つからない。
「こんな都会で星なんか見えるわけねぇじゃん」
『ベランダだけでいいから移動して探してみて。
多分あるはずだから』
「移動つったって大して広くな……あ。あった!」
少し移動して身を乗り出せば白い点を見つけた。
白く小さいけれど目立って明るい星。
きっとリカちゃんの言っているのはこれだろう。
「あった。見つけた」
『その星と向き合って左手伸ばして』
星のある方に向き合い、そして手を伸ばす。
『慧君に問題。今お前が向いてる方角は?』
電話口から聞こえる声に紛れるガサガサという音。
『ってお前にわかるわけねぇな。そこに見えてるのは北極星…向いてるのは北。ってことは左の方角は?』
「てめぇバカにすんなよ。西に決まってんだろ!」
『正解。その手の先に俺がいる。
俺もそっちの方に向けて手伸ばしてんだけど、どう?』
「どうって言われても…」
『離れた場所にいても確かに繋がってる。そう思うと寂しい気持ちもマシになるだろ?』
この先にリカちゃんがいる。
けれど、どんなに伸ばしても、どんなに掴んでも触れることは出来ない。
「なんか余計酷くなったんだけど」
現実では届かないことを実感しただけだ。
『お前は本当にムードっつーか情緒ねぇのな…。
なんならそっちの方に向かって好きだって叫んでやろうか?』
リカちゃんが叫ぶところ…見たいけど。
さすがにそれは近所迷惑にしかならない。
「星とか北とか言われてもピンとこない。
相変わらずお前が寒いヤツだってのはわかった」
『クソ生意気なのはどこにいても一緒か…。
わかった。俺を感じさせてやるから部屋に戻れ』
外に出ろと言ったくせに今度は中に入れと言うリカちゃん。
一体何がしたいのかわからない言動に戸惑いつつ部屋に戻る。
『戻ったか?』
「うん」
電話の向こうからも窓だか扉だかを閉める音が聞こえる。
そして俺を戸惑わせた張本人は『さあ始めるか。』と言葉を続けていく。
けれど、やっぱりそれはわからない…というよりはわかりたくない言葉だ。
『鍵かけて服脱げよ。嫌なことなんて俺が全部忘れさせてやるから』
返す言葉もなく俺は黙り込む。
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