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帰る為に駅へ向かう美馬さんを送ろうと俺たちも家を出る。
てっきり歩も帰ると思ったのに俺の隣にぴったりついて来て、家の方に向かう気配はない。
「お前帰んねぇの?」
「んー。ちょっと兄貴に用があって。あいつ何時に帰ってくんの?」
電話じゃなくわざわざ会わないといけない用事。それが何か気になる俺に歩はいつもと変わらない無表情で言った。
「別にとらねぇから警戒すんなよ。弟にまで嫉妬して疲れねぇの?」
「そんな心配してねぇし。嫉妬じゃねぇし」
「してんじゃん。バカらしい」
後ろで言い合う俺たちを美馬さんがチラッと見る。また怒られるかと歩が身構えるが、美馬さんはそのまま前に向き直った。
バレないように歩が耳打ちしてくる。
「なぁ…美馬さんってそんなショックだったのかな?」
「何が?」
「お前さっきまでの話忘れたのかよ。本当、兄貴のこと以外考えらんねぇのな」
歩の台詞にイラッときた俺は、さっき美馬さんが押してたツボに手を伸ばした…が、歩は簡単に避けてしまった。
フフンと鼻で笑うのが余計腹立つ。
「忘れてねぇし!
さっきの話ってアレだろ?拓海パパ事件」
「ネーミングセンス無ぇなお前。そんなんじゃ兄貴との子供の名前が心配」
「出来ねぇよ!」
「いや、あの兄貴だぞ?頑張ればイケんじゃね?」
…………いや無理だろ。
いくらリカちゃんが絶倫だとしても俺は男だ。
でももし出来たら…俺とリカちゃんの子供。
リカちゃんに似て黒髪で、リカちゃんに似てキザなのかも。
でもって確実にドSだよな…なんて考えてニヤニヤと笑ってしまった。
隣の歩が本気で引いた顔をしていたけど気付かないフリをした。
「じゃあ俺は帰るから。リカに宜しく」
美馬さんが片手を上げ改札に消える。
人より頭1つ分ぐらい大きくてかなり目立つけれど、美馬さんの周りには誰も近づかない。
本当は優しい人なのに少し可哀想だ。
「なぁ。戻る前に本屋寄りたい」
そう言った歩と2人で本屋へ向かう。俺が見るのは雑誌のコーナーと漫画のコーナー。
歩は迷わず文庫本の方へ行くと思ったらなぜか2階へ上がっていった。
2階は参考書とか資格の本が売ってある場所。
リカちゃんが隣に越してきた時に連れられて行ったきり俺はそこには行ってない。
適当な雑誌を立ち読みしていると、歩が袋を片手に戻って来た。
「何買ったんだ?」
「センターの過去問とか参考書とか。あとはどれがイイか兄貴に聞いてから買う」
あの歩が参考書?!
毎日遅刻、サボりが当たり前だった歩。
金髪にして不良デビューかと言われた歩。
勉強なんて面倒くさいし嫌いって言ってた歩がセンター試験を受ける気らしい。
驚いて二度見した俺を歩が呆れたように俺を見る。
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