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「選ぶのも決めるのも人それぞれ。どんな結果になったって受け止めるのは自分だからな」
「それ言ったら何にもなんねぇだろ」
歩の言ってる事は正しいけれど、どこか冷たく感じた。
「もし、これが桃さんだったら焦るんだろうな。美馬さんなら次の日にオムツとか買ってきそう」
その光景が頭に浮かんで思わず笑ってしまった。きっと桃ちゃんは焦ってリカちゃんに電話してくるだろう。美馬さんは動じないと思う。けど内心はドキドキしてそう。
「兄貴ならどうすると思う?」
歩が前を向いたまま俺に問いかける。
「兄貴ならどんな反応するか考えてみろよ」
「リカちゃん?リカちゃんなら産めよって言いそうだけど」
お前を世界で1番、生まれてくる子を世界で2番目に幸せにしてやるよ…とかクソ寒い台詞付けて言いそうだ。俺は絶対に妊娠はしないけど、もしそう言われたらって考えて照れた。
「本当にそう思う?」
「あ?」
「もし本当にそう思ってんならお前兄貴のこと全然わかってねぇな」
「どういうことだよ?」
「兄貴なら産ませない。今のお前には絶対に」
自信満々な歩。ハッキリと言い切った後にフッと笑う。
「この意味わかる?」
「全然わっかんねぇ。そもそも俺は妊娠なんかしねぇ」
「例えばの話だろ。お前が妊娠できる身体なら年中妊婦じゃねぇかよ。あの兄貴ならサッカーチームが作れる」
結局歩が何を言いたかったのかはわからないままだ。
最近の歩は何か意味深なことを言うくせに肝心なところは教えてくれない。自分で考えろって言って話を終えてしまう。
いくら聞いても教えてくれないことを知ってる俺は黙ってついて行くだけ。
大方のショップを探したのに拓海は見つからない。どこかで行き違いになったのかと、もう1度来た道を戻ろうとした時だった。
「歩!あれ!!」
俺たちのいるところとは反対側の通路に見かけた人影。ツンツン立てた髪に落ち着きのない歩き方。間違いなく拓海だ。
「拓海……って1人じゃねぇかよ。彼女はどこだ?」
「ってか何あの大量の荷物」
両手にたくさんの袋を提げ、身体を揺らしながら歩く拓海。時々人にぶつかりかけて危なっかしい。
気付かれないよう、そっと後ろに回り込み、一定の間隔を開けて後ろをついて行く。
拓海は、いつもは真っ先に入るショップに目もくれず道を進んでいく。
そして1件の店の前で立ち止まり、中へ入る。
「おい、慧」
「歩…これマジ?」
店の看板にはポップな文字とカラフルな動物のイラスト。リカちゃんにバカだと怒られる俺でも読み間違えることはない。
「ベビーショップってことは」
「赤ちゃん用品専門店………」
俺たちは拓海の隠されていた扉を開けてしまったのかもしれない。
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