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こちらを見たリカちゃんはすぐに視線をそらし、次の話を始める。
素早過ぎて他のヤツには気づかれなかったのはいい。
それはいい…んだけど。
「兎丸くん、顔赤いけど大丈夫?」
「別に平気だから」
隣のヤツから俺が変に思われたじゃねぇかよ。
どうしてくれるんだよ変態バカ教師!と睨みつけた。
もう俺に向くことのない視線。
ほんの少しの時間でも俺だけに向けられたソレは一瞬で俺をドキドキさせる。
「ヤりてぇな…」
「何を?」
聞こえてしまった独り言に、やたらと話しかけてくる隣のヤツ。普段は挨拶すらしねぇのに何だよ…と思いながらも俺は小さく笑った。
誰かさんのマネをして、誰かさんが言いそうなセリフを口にする。
「秘密。教えてほしかったら……っ、なんでもない」
やっぱり照れて最後まで言えない。
こんな言葉を恥ずかしげもなくスラスラと言えるリカちゃんは普通じゃねぇ。
「慧、今リカちゃん先生のマネしようとしただろ?」
後ろの拓海が俺の背中をつつく。
「してねぇよ」
「嘘だー。途中まで似てたもん」
「アイツのマネ出来るのなんて1人だけだろ」
拓海と2人で前の方に座る歩を見た。
そこには派手な金髪がこそこそ隠れてスマホを弄ってる姿がある。
普段は放ったらかしのソレを隠れてでも触るってことは桃ちゃんから連絡が来たのかも。
いや、歩のことだから朝来たのを今返したのかもしれない。
「リカちゃん先生もだけど歩も変わったよなぁ。なんか優しくなった気がする」
「そうか?相変わらず偉そうだけど」
「でも慧はあんまり変わらないな!」
「そういう拓海だって変わってねぇだろ」
そうでもないか。
いつもと同じようにバカをしてリカちゃんに怒られたくせに…なんで俺たちに隠し事してんだよ。なんでソレを言ってくれないんだ。
他のヤツらはともかく俺と歩には言ってくれてもいいのに薄情なヤツ…って考えて、それは違うと思った。
俺だってリカちゃんが隣に越して来たことも、色々あったことも言ってなかったから。
全部終わってから言ったんだから拓海のことは責められない。
そもそも最近の俺は欲張りだ。今だって十分なぐらい歩とも拓海とも上手くやれてるのに。
それなのに少しの秘密で裏切られた気分になって、置いていかれそうでイライラしてる。
自分のこれからが決まらなくて、その焦りを2人に…いや、リカちゃんも含めて3人にぶつけてる。
「そんなに俺変わってないか?」
頬杖をついて外を見ていた拓海に聞いてみた。
大きな目が俺を移しニカッと笑う。
「変わったけど変わってない!でもどんな慧も慧だからいいんじゃね?」
「お前の言ってる意味わかんねぇよ」
「無理して変わることねぇよ。俺はワガママで寂しがりな慧が好きだぞ!!」
拓海の『好き』に反応してリカちゃんがこちらを向く。
うるさいって怒られるかと思ったのに何も言わずに黙ったままふんわり笑う。
それは2人の時に見せる特別な笑い方。
周りのヤツらが顔を赤くする中、久しぶりに見るその甘すぎる笑みに俺は顔を伏せた。
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