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昼飯を食べながら拓海から聞いた話によれば。
妊娠したのは拓海のお姉さんの聡海さん、相手はその彼氏。彼氏さんの方は聡海さんより年上で一応社会人らしく、2人は結婚する……つもりなんだけど。
初めての妊娠で聡海さんがピリピリしてるらしくてケンカばっかりみたいだ。その愚痴を拓海が聞いてる…でもって病院の付き添いもよくしてるらしい。
俺と歩が見たあの買い物も暑いから聡海さんの代わりに行っただけで、全部俺たちの勘違いだった。
「ってかさぁ、なんで俺がパパだって思ったんだよ?いつ気付いたの?」
「それは…」
「美馬さんからお前が女に連れ添って病院から出てくるとこ見たって聞いたから。あの人、聡海さんのこと彼女と勘違いしたんだろうな」
フェンスにもたれながら食後の一服を楽しんでいた歩が紫煙を吐き出しながら続ける。
「お前いいパパになるって言ったんだって?それ聞いたら誰でも勘違いすんだろ」
「あー……あぁ!あの時のか!!ケンカしてすぐ後でさぁ…聡姉が産む自身無いって言うから、つい出ちゃったんだよ」
終わってしまえば単純な勘違いだった。最初から美馬さんが声をかけていれば、こんなことにはならなかったのに。
「なんで拓海は俺たちに内緒にしてたんだよ?」
「別に内緒っていうか…なんかテンパちゃって。
あの聡姉がお母さんになるって信じられる?目玉焼きすら作れない、慧みたいな料理下手がだぞ?」
最後の一言は絶対余計だろ…。言い返そうとする俺を阻むように歩が身を乗り出す。
「聡海さんの妊娠ってもう親に話してんの?」
拓海が固まり、嫌そうに顔を歪めた。両手で覆った顔がどんどん俯いていく。
珍しく低く唸る声を出しながらボソリと零す。
「それがさ……反対するかと思ったら一言『たっくん頑張ってね!』って。なんで聡姉本人じゃなく俺なの?また俺に全部任せるつもりなんだよ」
鳥飼家の家事は拓海が全部やってるからな…。長男で小説家の紘海くん、長女の聡海さん、妹の七海ちゃん。4人の世話を拓海が1人でしてるようなもんだから。
「いや、いいんだけど…ナナの時で慣れてるからさ…。俺もうお母さんでお父さんだよ」
フッとカッコつけて笑う拓海。全然似合ってないその仕草がなんとも言えない。
ここで歩みたいにタバコを咥える……ことはなく咥えたのはイチゴミルクのパックに刺さったストロー。
ちなみにイチゴミルクの理由は牛乳が飲めなくて、でも背を伸ばす為に考えた拓海の苦肉の策だ。
ソレを勢いよく吸って拓海が顔を上げる。
「でもなんで豊さんは2人に相談したんだろ?」
「さぁ…直接お前に聞きづらかったからじゃねぇの」
「なんで?その場で声かければよかったじゃん」
確かにそうだな…と俺は不思議に思った。
その場で声をかけていれば大事にもならずに済んだはず。それなのに、どうして美馬さんは拓海に声をかけなかったんだろう。
「聡海さんが一緒だったからだろ。気を遣ったんじゃねぇの」
そう言った歩の視線がスマホにいく。拓海の子供じゃないってわかったから興味を無くしたに違いない。歩ってそういうヤツだから。
「ふぅん。大人って気ばっか遣って疲れるのな。俺はまだ学生でいたいなー…」
「そうか?俺は早く大人になりたいけど」
「歩は黙ってれば高校生に見えないからいいじゃん」
そんな2人の会話を聞きながら、俺はなんとも言えない気持ちになるのを抑えきれなかった。
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