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初めて俺の部屋に入った拓海君はキョロキョロしながら周りを見ている。珍しい物など何も無いはずなのに、今日もその目はキラキラと輝いていた。
「狭くて悪いな」
リカやウサギ君の家と違い俺のマンションは1LDK。新築でもなんでもない『平凡』なマンションだ。
2人掛けの小さいソファーに腰を降ろした拓海君にグラスを差し出す。ふふっと声を出して笑ってそれを受け取る。
「どうした?」
「ううん。やっぱり豊さんは甘党なんだなーって」
グラスの中身はオレンジジュース。果汁100%でもない甘ったるいもの。
こんな図体で強面のくせに俺がかなりの甘党だというのは、何度か俺が甘い物を食べたり飲んだりしているのを見ている拓海君なら知っていることだ。
「豊さんが甘いジュース飲んでるなんて誰も想像しないだろうなぁ」
「嫌か?お茶に替えてくるけど…」
拓海君がグラスの中身を半分ほど飲み首を振る。
「ううん。俺もこっちの方が好き。それに部屋も豊さんの部屋の方が落ち着くー」
伸びをしてニコニコ笑う。部屋のことなど口に出していないのに拓海君の野性の勘はすごいと思った。
少し前に桃が拓海君は見ていないようで見ている子だと言っていた。あの時は、このオカマは何を言っているんだと思っていたのに。それはどうやら本当らしい。
唇を尖らせながら一通り部屋を見た拓海君が俺を指さす。
「豊さん、今日嫌なことと良いことあったでしょ?」
「え?」
「暗い顔と嬉しそうな顔してる」
拓海君が指をくるくる回せば、それを見ている俺の目も回る。それにケラケラ声を上げながら笑って拓海君は続ける。
「豊さんって本当わかりやすいよね!」
「は?」
「いつも歩とかリカちゃん先生見てるからさー、豊さんと話してるとわかりやすい。あ、でも最近の歩はわかりやすいかも!」
残りのジュースを飲み干し、グラスをテーブルに置いた拓海君が首を傾げる。
いつものようにツンツンと立たせた髪が揺れて、それが本物の鳥みたいだなんて思ってしまった。
「俺に聞きたいことあるんでしょ?」
「聞きたいこと?」
「うん。慧と歩から豊さんが俺のこと心配してたって聞いた。それなら俺が直接会いに来たら早いかなって思ったんだけど」
「………あいつら」
「え?マズかった??」
あの面倒くさがりで不器用そうなクソガキな2人に任せた俺がバカだった。
確かに相談したのは俺だ。高校生に大人が相談するなんてあり得ない…けれど。
どう考えてもこの展開はもっとあり得ない。
何の音沙汰も無いと思っていたら、まさかの本人がやって来るなんて誰が考える?
これじゃあ俺が本人じゃなくあの2人に聞いた意味がない。そもそも嘘のつけなさそうなウサギ君と、何を考えてるか全く掴めない歩君に頼んだのが間違いだったかもしれない。
動揺を隠す俺の目の前で丸い目がパチパチと瞬きを繰り返す。
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